烈火の意味
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を伸ばした。
そこに目的のものがなく、少し不満げに外を眺める。
シミュレータ筺体の外で、呆れたような視線が突き刺さる。
「酷い目だな」
呟いた言葉に、呆れた表情のままでサミュールが手にしたコーヒーを渡してきた。
購入して、三十分たっていないそれはいまだ冷たく、アレスは嬉しげにふたを開ける。
「にがっ。て、なんだ?」
目当ての飲み物を飲んで、いまだに刺さる視線に眉をひそめる。
「なにって。鬼ですね」
「失礼なやつだな。全力であたっただけだろう?」
「その全力が鬼だから、皆引いているんですけれど」
「ああ……」
誰も近づいてこない理由に納得した。
まだ大会から日が近いこともあって、周囲との連携を調整することしか訓練ではしていない。少なくとも、いまだにアレスは全力をチームのメンバーにも見せていない。
「ちょっと早いけど、明日からは訓練で俺も全力でやるか?」
「なにさらっととんでもないことを言ってるんですか」
「なに、少し早まったくらいだろう。連携もとれてきたし」
「そうしてつけた後輩の自信を、速攻でへし折るから鬼だというのです」
「伸びすぎた鼻は折らないとな?」
「植物の剪定でもするように、さらっと言わないでください」
アレスとサミュールの言葉に、フレデリカを初めとした後輩たちはひきつった。
そんなに嫌なのだろうか。
確かに大人気ないと言えば、大人気ないかもしれなかったが。
……いや、バグを使った時点で、相当大人気ないだろう。
刺されても文句は言えないかもしれない。
そう考えれば、背後から近づく気配に、アレスは肩を震わせた。
後ろを振り返れば、そこにいるのは頬を紅潮させた少女だ。
「ありがとうございました、マクワイルド先輩」
言葉とともに頭を下げる動作に、アレスは後ろに下がった。
その様子に、顔をあげたライナは眉をひそめる。
「どうかしましたか?」
「いや。何と言うか……」
彼女のためにしたこととはいえ、実行した事は後輩からも鬼と批判されて良いことだ。
ましてや、実行の対象となった相手からのお礼の言葉にアレスは苦笑する。
「見事な戦いでした。私も勉強をさせていただきました」
「あのずるが?」
茶化すように、サミュールが小さく笑えば、ライナは振り返った。
変わらない表情のままで、緩やかに首を振る。
「私が全力でとお願いしたからなのでしょう。仮にそれを使わなかったとしても、結果は変わらなかったと思慮します。そうですね、追加でコーヒーの代金が発生したくらいで」
どうでしょうと問いかける視線に、アレスは頬をかく。
出来が良すぎる後輩も困るものだなと。
「今ならば最初からコーヒーを諦めるさ」
「あの戦いが
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