烈火の意味
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ちらがミスをすれば、あるいは味方の誰かがミスをすれば、逆転の目が残る。
そのわずかな可能性に、全力を持ってかける。
それは今まではなかった――おそらくは効率とはかけ離れた、無駄な努力と言える艦隊運動かもしれない。
その無駄な努力が敵を恐がらせる。
敵は他に何か考えているのではないかと。
成長する後輩に笑みすれば、すぐにアレスは口元から笑いを消した。
笑っている場合ではない。
彼女は全力で戦うことが望みだったと、コンソールを叩く。
既に完成された鋒矢が敵を目指して進み、同時に敵の一部隊がこちらの動きを阻害する動きを見せた。
それに対して、敵の艦列を崩した小規模艦隊は再編を終えている。
五百の艦隊が五つ――二千五百にまで増えた分艦隊が、敵の正面に火力を集中させる。こちらを阻害しようとした敵艦隊は、横からの攻撃に再び艦列を乱す。
そこへ――アレスの本隊が矢となって、敵を貫いた。
+ + +
第11分艦隊旗艦 損傷。
第23分隊 壊滅。
第105分隊 壊滅。
第……。
続く文字の羅列に、ライナはもはやコンソールを叩くことをやめた。
突入直後の航空母艦による戦闘艇の射出。
それを得意とするという情報があっても、それが始まってしまった今ではもはや考えられる対策はない。少しでも逃げようとするが、もはや艦隊半ばまで食い込んだ敵の矢は、こちらの艦隊を容赦なく蹂躙していく。
第24分隊 壊滅。
第53分艦隊旗艦 旗艦損傷。
第31大隊 壊滅。
第……。
流れていくこちらの損傷状況を見て、ライナは納得した。
烈火のアレス。
誰が名付けたのか、それはアレスの攻勢への強さを象徴するあだ名だ。
食い込まれたが最後、燃料がなくなるまで燃え広がる。
それはまさしく彼の苛烈さの象徴であって、彼にふさわしい名前だろう。
だがと、ライナは流れる画面の情報を目にして、小さく思った。
おそらく最初に名前をつけた人間も、この状況を目にしたのではないだろうかと。
第13分隊 損傷。
第23分隊 損傷。
損傷。
損傷。
損傷。
損傷。
損傷。
もはや情報画面には、こちらを意味する赤しか見えなくなっている。
画面いっぱいに広がる赤文字に、ライナは彼のあだ名の意味を理解する。
「これが烈火……」
呟いたライナの目に、一条の光が走り抜けた。
+ + +
『……星系の戦闘結果。青軍、アレス・マクワイルド。赤軍、ライナ・フェアラート。損耗率、青軍18.7%、赤軍78.3%。フェアラート旗艦の撃沈により、アレス・マクワイルドの勝利です』
機械的な音声が鳴り響く中で、アレスは筺体の扉から手
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