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京に舞う鬼
第二十一章
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悟があったのだ。それは貴子にしかわからないものであった。だから二人にわからなかったのも仕方ないことであった。
「わかりました。それでは」
 役はそれを聞いて応えた。
「まずは延暦寺へ向かいましょう。そしてそこに入ってもらいます」
「わかりました」
「それからですね、まずは」
「だがこれで大きく動くな」
 役の目はさらに先を見ていた。
「備えを整えることができる」
「備え、ですか」
「それがまずは何よりも大事だ、今回は特に」
「鬼を倒す為にも」
「そういうことだ。では竜華院さん」
 本郷も役も貴子に声をかける。
「参りましょう」
「はい」
 貴子もその誘いに応える。
「それでは」
 三人は延暦寺に向かった。そしてその奥にある院の一つに貴子を導き入れたのであった。そこは古い院であった。延暦寺は一度織田信長によって焼き払われているがそれより前にあったのではないのかと思える程古い建物であった。だがその中は奇麗に整えられていた。
「こちらですね」
「宜しいでしょうか」
 役は貴子に対して言った。三人は今その院の前にいた。周りには緑の木々が生い茂っている。そこから蝉の声が聞こえてくる。それが今は夏であるということを嫌が応にもわからせていた。
「古い院ですが」
「私は別に」
 彼女にそれを拒む理由はここでもなかったのであった。
「構いません。どちらであっても」
「わかりました」
「じゃあそれで決まりですね」
 本郷も言った。
「話が終わるまで。ここにいてもらいますよ」
「はい」
「何もないところで申し訳ないですが」
「いえ、それは」
「何ならこれでもやりますか?」
 本郷はその肩にかけているショルダーバッグからふと何かを取り出してきた。
「丁度いい暇潰しになりますよ?」
「それは?」
 だが貴子はそれを見て目を丸くさせた。
「ゲームウォッチ・・・・・・ではないですよね」
「役さん」
 本郷はゲームウォッチという言葉を聞いて顔を顰めさせた。そのうえで役に問うてきたのだ。
「まさかとは思いますけど」
「あの」
 役もそれを受けて貴子に声をかけてきた。
「何でしょうか」
 それでも貴子はわかっていないようであった。役は危惧を覚えながらも彼女に尋ねた。
「ゲームボーイアドバンス、御承知でしょうか」
「ええ、ゲームボーイなら」
 どうやら名前は知っているようである。
「噂に聞いたことがあります」
「噂、ですか」
「私ゲームはあまりしませんので」
「あまり、ですか」
 とてもあまりには思えない言葉ではあったが二人はそれでも頷いた。
「特にここ数年は。遠ざかっておりまして」
「じゃあこれはしませんよね」
「ええ、ゲームウォッチは弱くて」
「だからこれゲームボーイアドバンスな
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