第百四十二話 小谷城からその三
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「ねね様を第一と申される」
「やはり奥方を大事にせねばですな」
「男としてなりませぬな」
「それで兄上」
秀長は話題を変えてきた、今度の話題はというと。
「この戦から帰れば」
「うむ、母上にじゃな」
「今度は何を買われますか」
「そうじゃな、絹の服はもうたんまりと差し上げておるしのう」
二人で母にとにかく絹の豪奢な服を買って贈りものとしている、しかしそれももうあまりにも多くなりだというのだ。
「他のものにするか」
「では何を」
「そうじゃな、珊瑚はどうじゃ」
「珊瑚ですか」
「それか夜光杯か」
これも話に出した。
「あれにするか」
「夜光杯は高過ぎて手が届かぬかと」
十万を超える石高でも流石にだと、秀長は兄に話した。
「ですからここは珊瑚では」
「それがよいか」
「確かに夜光杯はよいですが」
このことは秀長もわかっている、だがそれでもだというのだ。
「手が出せませぬ」
「確かにのう。家中でも持っておられる方は僅かじゃ」
流石にそこまでのものとなると織田家の家中でも持っている者は殆どいない、十万石を超える者でもである。
「諦めるか」
「ですから珊瑚で」
「そうじゃな、それではな」
「珊瑚で」
この話はこれで終わった、一行はそうした軽い話もしていたがやはり全体的に緊張していた、そしてその緊張の中でだった。
織田家と徳川家の連合軍はまずは小谷城を囲んだ、そのうえで近江の北の至る城に使者を送って織田家に降ることを促した、だが。
「ふむ、どの城もか」
「はい、浅井家の家臣だと言いまして」
村井は信長に述べる、本陣は小谷城のすぐ前にある虎御前山に置いていた、既に周りの家や村の者達は巻き添えを怖れ逃げてしまっている。
小谷城と虎御前山の間には織田家と徳川家の大軍があるだけだ、青と紫、黄の軍勢が紺の旗が立つ大きな山城を囲んでいるのだ。
その本陣の中でだ、村井は信長に述べていた。
「どの城も」
「そうか、ではな」
「各城に兵を送ることは」
「今はせぬ」
止めておこうというのだ。
「それよりもじゃ」
「では先に」
「朝倉家じゃ」
何といってもこの家だった、まずは。
「その城を攻めてじゃ」
「そしてですな」
「そうじゃ、そのうえでじゃ」
朝倉家を降しそれからだった。
「浅井家を完全に孤立させてからな」
「そのうえで、ですな」
「どうにかする。まあ周りの城も小谷城が陥ちれば」
それでだというのだ。
「どの城も数える程の兵しかおらぬしな」
「今小谷城には一万を超える兵があります」
池田がここで信長に述べてきた。
「しかし他の城は」
「何処もじゃな」
「それぞれ数える程しかおりませぬ」
「こちらに攻めることも出来ぬまでにな」
城に
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