第百四十二話 小谷城からその一
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第百四十二話 小谷城から
信長は姉川での戦いに勝利を収めその夜は兵達にふんだんに酒や馳走を口にさせた、そしてその朝にだった。
出陣させてだ、そのうえでだった。
信長は兵を小谷城に向かわせた、その中で兵達は考える顔で話をしていた。
「いや、いよいよか」
「うむ、そうじゃな」
「小谷城を囲みか」
「浅井家攻めじゃな」
「そうなるのかのう」
こう話す、しかしだった。
ここでだ、その彼等い秀長が言った。
「そうした話はせぬことじゃ」
「あっ、そうですか」
「それでは」
「うむ、気持ちはわかるがな」
これから自分達がどういった戦に入るのか考えることは当然だ、秀長もそのことはわかるというのだ。
だがそれでもだった、そのことを話すことはというのだ。
「止めておくことじゃ」
「では、ですな」
「今は」
「うむ、そうした話はせずには」
では何の話をすべきか、秀長は笑ってこの話を出した。
「例えば兄上の浮気の話とかのう」
「おお、羽柴様もですか」
「側室を迎えられますか」
「いや、それはまた意外な」
「羽柴殿は奥方を随分大事にされているそうですが」
「実はなのですか」
「そうじゃ、実は兄上はあれで結構な女好きじゃ」
笑ってだ、事実とそうでないこと混ぜて兵達に話していく。
「しかもあの顔でな」
「もてまするか」
「実は」
「これは言っておく、男は顔ではない」
猿面の羽柴がいい例えだというのだ。
「それじゃ」
「いや、顔では」
「男は顔では」
兵達は秀長の言葉に怪訝な顔で返した。
「顔がよいからもてるのでは」
「殿にしても」
信長の顔立ちについてはよく知られている、細面で白い。目鼻立ちも極めて整い背も高く均整が取れている。
当然ながらおなごからも人気がある、それでなのだった。
「あれだけのお顔立ちだからこそ」
「ですからおなごにもてるのでは」
「そう考えますと男は顔ですぞ」
「他にはありませぬぞ」
「では殿のお心はどうじゃ」
信長の気質である、ここで秀長が言うのは。
「それは」
「殿のですか」
「お心ですか」
「そうじゃ、どうじゃ」
「いえ、それはもう」
「言うまでもありませぬぞ」
足軽達はすぐに秀長に答えた。
「殿のあのご気質は惚れ惚れします」
「そのお顔以上です」
「ほれ、そこじゃ」
まさにそこだというのだった。
「殿はそのご気質があるな」
「確かに、そのご気質があるからこそです」
「我等は殿が好きです」
「一生ついていきたいと思います」
「そう思っています」
「そういうことじゃ、幾ら顔がよくともな
気質、心が悪ければだというのだ。
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