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京に舞う鬼
第二章
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間はいつも」
「下・・・・・・ああ、あそこか」
 そのハーブティーの有名な喫茶店のことである。警部にもすぐにわかった。
「そういえば彼は紅茶が好きだったね」
「紅茶だけじゃありませんけどね」
 本郷はそれに応えて言った。
「美味しいものには目がないんですよ」
「所謂グルメか」
「俺も味には五月蝿いですよ」
「それはどうかね」
 だが警部は役に対しては懐疑的であった。
「そりゃどういう意味ですか」
「君はとてもそうは見えないからね」
「嫌だなあ、そんなこと言うと」
 あからさまに顔を不服そうにさせてきた。
「俺はこう見えても食べることには五月蝿いんですよ」
「それは量の方じゃないのかい?」
「うっ」
 言葉が詰まった。反論出来ないのは彼自身が最もよくわかっていた。今までの言葉はほんのはったりであったのだ。
「味と量は違うよ。特にこの京都ではね」
「そもそも一見さんお断りとか俺の性に合いませんから」
 言い訳になっていた。
「違いますか?」
「つまり味には五月蝿くないということを認めるんだね」
「まあ」
 ここまできたら不承不承ながら認めるしかなかった。本郷は憮然とした顔で頷いた。
「仕方ないですね」
「また口が減らないな」
「嫌々ってやつですよ」
「そこまでして認めたくないものなのかい?別にどうということはないと思うが」
「京都じゃそうじゃないんでしょう?」
 本郷はこう返した。
「料理の一品一品は少なくて高価、けれど素材には手間隙かけて味は絶品」
「まあそうだけれどね」
 それが京都の料理とされる。少なくとも関西の他の府県とは料理に関する考えがかなり異なっている。とりわけ大阪のそれとは全く違ったものとなっている。
 しかも同じ京都府でも所謂ここ京都と舞鶴等ではまた違う。とかく京都は他の街とは違う異質な街なのである。それが京都なのだ。
「けれど君達みたいな若さじゃそうした店は行くこともないんじゃないのか?」
「一見さんですからね、俺はいつも」
 ふてくされた声でこう述べる。
「こんなジーンズなんか履いてちゃ入れない店ばかりで」
「まあスーツでも一見さんは同じなんだけれどね」
「嫌なことですよ。けれど役さんと一緒だと違うんですよね」
「ほう」
「殆ど顔パスです。楽に入れるんですよ」
「それは何よりじゃないか」
「けれどねえ」
 だがそれでも彼は不満を顔に見せていた。
「何て言うか」
「まだ不満があるようだね」
「そうですよ。だってやっと入れたと思ったら」
「うん」
「ちょびっとですよ、料理が」
「だからそうしたものなんだって」
 警部はまた言った。
「ここは京都なんだから。大阪じゃないんだよ」
「ああやだやだ」
 溜息混じりに言う。
「美味いものをこ
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