暁 〜小説投稿サイト〜
京に舞う鬼
第十九章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

第十九章

「ならば」
 役は今度は銃を構えた。それで鬼の額を狙う。
 銃口が火を噴いた。そこから銀の弾丸が放たれる。しかしそれも身を分けてかわすのであった。
「無駄だと言っておろう」
「くっ」
「銀は確かにわらわの様な者を滅ぼす力はある。じゃがそれは射抜けばこそ」
「当たるつもりはないということか」
「そうじゃ。残念じゃったな」
「・・・・・・・・・」
 貴子はそんな鬼を黙って見ていた。鬼の言葉に何かを感じているようであった。
「この程度の軽い攻撃なぞ。当たってやるわけにはいかぬ」
「じゃあ俺のこれはどうなんだよ」
 上から手裏剣の雨が降りる。どうやら本郷は木々の上を飛び回りながら鬼に対して攻撃を仕掛けているようなのである。
「子供騙しって言うのかよ」
「そうじゃな」
 鬼は手裏剣を見ることなく平然と左右に動いてかわしている。見れば身体は全く動いていない。地の上を滑ってかわしていたのであった。
「童の遊戯じゃな」
「クッ」
「所詮主等は人よ」
 鬼は二人を侮蔑した声で言い捨てた。
「わらわの様に鬼ではない」
「だけどな」
 本郷は攻撃を止めた。上から鬼に対して言う。
「鬼はな、人間に倒される宿命なんだよ」
「ほう」
「こうやってな」
「面白い。来るか」
 鬼は上を見上げて構えた。上から本郷が刀を振り下ろしながら襲い掛かってきていた。
「死になっ!」
 役も援護に式神を放つ。二人の連携攻撃だ。だがそれを見ても鬼は冷静なままであった。
「所詮無駄よ」
 消えた。それで二人の同時攻撃もあえなくかわしてしまった。
「チッ!」
「クッ!」
 二人はそれを見て同時に舌打ちした。攻撃は失敗し、本郷の刀は空を斬り、役の式神は空しく飛ぶだけであった。
「甘いのう、まことに」
 鬼は姿を現わした。少女の首を咥え、遠くで笑っていた。
「この程度では。腹ごなしの舞踊にもならぬわ」
「何処までも。余裕だな」
「わらわを倒したければ源頼光か八幡太郎でも連れて参れ」
 どちらも平安期にその武勇を知られた剛の者達である。その武勇は言うまでもない。
「さすれば少しは楽しめるであろうに」
「俺達の手にはかからねえってのかよ」
「無理じゃな」
 鬼の言葉は相変わらず余裕に満ちたものであった。
「主等ではな。その証拠にわらわは息一つ乱れてはおらぬ」
「じゃあ今度こそ」
「無駄だ、本郷君」
 役は鬼に向かおうとする本郷を制止した。
「役さん、けどよ」
「一人では。あの鬼には勝てない」
 彼は首を横に振ってこう述べた。
「それはわかっていると思うが」
「・・・・・・・・・」
 その言葉にさしもの本郷も沈黙してしまった。
「いいな」
「わかりましたよ」
 憮然としてだがそれに頷いた。
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ