ヴァンフリート星域会戦 その二
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る決戦で人的経済的資源の消耗に耐え切れないと塞ぐのは不可能だ。
敵の側に立って考えてごらん」
もちろん、史実を知っていた緑髪の副官はイゼルローンを取ってしまったが為に同盟に何が起こったかよく知っていた。
だからこそ、人形師は躊躇う事無く、建設途中のイゼルローン要塞を破壊してみせたのである。
これによって帝国軍は同盟領内という先の見えない奥地で決戦を強要されて、ずるずると負けて人的・経済的資源を失っていったのだから。
「艦長。
帝国にはまだいくつか要塞があったと思いますが、そいつらが出張ってきたらどうするんです?」
ラオ少佐の質問にヤンは紅茶を飲み干した紙コップを置いて答えた。
「むしろ歓迎すべきことだ。
拠点をつけて移動するしかないって事は、要するに長距離侵攻能力の途絶を意味するんだから。
間違いなくその一戦、たぶん決戦になるだろうけど、それに勝てば帝国経済は再度崩壊してまた十数年ばかりの平和を堪能できると思うよ」
オペレーターが急を告げたのはその時だった。
「司令部より入電!
艦隊規模のワープアウト反応を確認!」
「第一種戦闘態勢発動!
各艦に伝令」
「了解」
ヤンの命令にオペレーターが答え、ラオ少佐が敬礼して予備指揮所に駆けてゆく。
万一艦橋がやられても艦を運営する為の処置だ。
「ところで艦長。
机ではなくて、椅子に座っていただけませんか?」
「こっちの方がおさまりがよくってね。
ところで、敵の艦隊の指揮官は分かるかな?」
繰り返される他愛の無いやりとりが心を落ち着ける。
とはいえ、机に座る艦長というのはかっこ悪いので副官以下、艦橋の全員が椅子に座ってくれたらなぁと思っている事は公然の秘密となっている。
「変更が無ければ、シュターデン提督かと。
無人艦隊理論を提唱して、イゼルローンに配属されたはずです」
来寇する敵艦隊の人事情報が分からないほど同盟の諜報組織は衰えていない。
特に、将官の配属先データは機密であるが、機密とは呼べない代物だったりする。
具体的には、フェザーンのダミー会社を使って、帝国軍にこう尋ねたに過ぎない。
「さるお方から彼宛に荷物を届けたいのですが、どちらに送ればよろしいので?」
もちろん、この手の荷物は軍が預かって軍内部の輸送部隊が運ぶのが筋だが、皇帝を頂点に貴族達が君臨する銀河帝国において『さるお方』を探る事は危険すぎるのだ。
その為、荷物を預かった後の受取届でオーディンより何日後と分かれば、その周囲の基地や艦隊に当たりがつけられる。
低優先度の将校などは、このダミー会社自身が届けるという杜撰ぶりで、物資移動と将兵移動によって帝国軍の動向はかなりの精度で
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