第四十八話 感情がモロ見えなんだよね
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た。
「どうするつもりだ?」
「帝国側の使者は交渉時間は四十八時間だけだと言っている」
「四十八時間? まさかとは思うが時間切れを狙っているのか?」
「かもしれない。交渉は纏まらなかった、時間が足りなかった、そういう事にしたいのかもしれん……」
「しかしそうなれば捕虜交換は……」
ホアンが口籠った。じっとこちらを見ている。
「帝国の使者が妙な事を言ったらしい」
「妙な事?」
「ヴァレンシュタイン元帥が帝国の実権を握って以来、帝国では捕虜の待遇を改善しているようだ。その経費が馬鹿にならないらしいな」
ホアンが眉間に皺を寄せた。
「では帝国が交換を提案してきたのは……」
「経費削減、それも有るのかもしれない」
「考えられなくは無いな……」
ホアンの言う通り有り得る話ではある。同盟側も捕虜の扱いには困っているのが現状だ。しかも抱える捕虜の数は帝国側の方が圧倒的に多い。
「政府はここで交渉を蹴っても再度帝国は交渉をしてくるだろうと踏んでいるようだ」
「なるほど……」
「引き延ばせば謝罪では無く金銭、或いは何のペナルティも払う事無く捕虜交換が成立するかもしれないと考えている」
私が言い終わるとホアンが首を横に振った。
「そう上手く行くかな。君はどう思うんだ?」
「ビュコック司令長官には謝罪して一日も早く捕虜交換を実施した方が良いと言ったよ。君の言う通り、そう上手く行くとは思えない。傷を負うなら出来るだけ浅手にすべきだ」
「……」
「しかし政府は傷口に塩を擦り付けられるんじゃないかと恐れているようだ。残念だが大胆な行動が出来る様な状況じゃない、まず受け入れられる事は無いだろうな」
ホアンが溜息を吐いた……。ホアン、溜息を吐かないでくれ、気が重くなる。
政治家は支持率に気を取られ上手に負ける事が出来なくなっている……。昨年の帝国領遠征があそこまで酷い結果になったのも負け方が下手だからだ。シトレはあの遠征が失敗に終わると分かっていた。だから自ら指揮を執る事で最小限の傷で終わらせようと考えていた。上手に負けようと考えていた、それなのに……。
嫌な予感がする、今回の政府の判断も気付かないうちに下手な負け方を選んでいるんじゃないだろうか……。ホアンだけじゃない、私も溜息を吐いていた……。
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