第四十八話 感情がモロ見えなんだよね
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いたような表情を見せた。帝国は同盟を国家として認めていない。それなのに軍では無く政府が前面に出てきた、ホアンにとっても予想外の事だったようだ。
「政府、という事か……」
「人は同じだがな」
「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン……」
「うむ」
帝国宰相兼帝国軍最高司令官、政軍のトップ、つまり帝国そのものと言って良い人物が敢えて帝国宰相として捕虜交換を提案してきた……。
「気に入らんな」
「確かに気に入らない、いや引っかかると言うべきかな」
ホアンが私の言葉に頷いた。
「しかし公表されていない、例の出兵が響いているのかな」
「まあそうだろう、ネグロポンティの首を切ってようやく落ち着いたところだ、政府としては余り触れられたくないところだろうな」
「癒えかかった傷口に塩を擦り付けられるようなものか、痛みで飛び上がりかねんな」
国防委員長ネグロポンティの辞任で例の出兵失敗の幕引きを図ったが政府の支持率は間違いなく低下した。トリューニヒト最高評議会議長の手腕にも疑問を投げかける声が上がっている。それでもようやく落ち着いてきた。そんなところに捕虜交換だ。ホアンの言う通り、癒えかかった傷口に塩を擦り付けられるようなものだ。
「公表しないのには他にも理由が有る」
「……というと?」
「出兵の件、帝国は同盟政府に謝罪しろと要求しているらしい」
「それは……」
ホアンが絶句した。そして鹿肉のローストを一切れ口に入れた。ゆっくりと咀嚼しながら何か考えている。
「他に条件は?」
ホアンが更に声を低めて訊いて来たが私が首を横に振ると“無いのか?”と言って顔を顰めた。
「使者はイゼルローン要塞で同盟政府の回答を待っている。もう二日になるそうだ」
ホアンが唸り声を上げた。
「政府は回答を出せずにいる、そういう事だな」
「一度は金で解決しようとしたらしい」
「金で? 金で謝罪するという事か」
「こちらの方が返還してもらう捕虜が多い。帝国に対しては謝罪金だが国内に向けては多く返して貰う分の代償だと説明するつもりだったようだ」
ホアンが“姑息な”と呟いた。
「帝国側は受け入れなかったんだな?」
「一顧だにしなかったそうだ」
「あくまで謝罪を要求してきたか……」
「うむ」
ホアンが難しい顔をして“うーん”と唸った。二人ともナイフとフォークを持ったまま動かそうとしない。
「こちらに非が有ると認めさせようとしているわけだな……」
「政府としては受け入れがたいところだ。受け入れればまた政治的混乱が発生するだろう」
「確かにそうだな。……それが狙いかな?」
ホアンが首を傾げている。
「可能性は有るだろう。油断出来ない相手だ、これまで何度も煮え湯を飲まされてきた」
ホアンが私を見た。私が頷くとホアンも頷い
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