第十四章
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妙なことだ」
役もそこに気付いていた。
「季節が一致していないな」
「ええ」
「今は夏だというのに普通に藤や椿の花が出ている」
「今は栽培技術の発達のせいで何時でも見られるようになったにしろ」
「ここに謎があるのかもな」
「花にですか」
「そうだ。わざと季節を無視した花を出したりもする」
役は言った。
「鬼は。そこに何かを見出しているのかもな」
「季節の異なる花を演出に使うことにですか」
「それと同時に少女だ」
また被害者に目を戻した。
「長く黒い髪の良家の美女ばかり襲う」
「はい」
「おそらく生娘ばかりをな。異様な趣味だ」
「そこに茶に花に踊り」
「さらに限られてくる」
京都にそうした家は多いにしろだ。それでもこうも事象が重なれば自然と物事が狭まってくるものだ。二人は今それを感じていた。
「鬼が何者か、ですね」
本郷は呟いた。
「ここまで演出に凝れるのだ。相当そちらに造詣の深い者だ」
「それに同性愛者でしょうね」
「そうなるか?」
「はい。どうも今までの演出ってのを見ますとね」
本郷は遺体がかけられていた清水の木を見て言った。そこにも演出があったからだ。
「どうもそこに感じるんですよ、そうしたものを」
「そうしたものを、か」
「はい。女の子ばかり狙うのはね。ある意味独特なんですよ」
「女でありながらか」
「男だってそうなんですよ。同性にしか興味がない奴になるとね」
何時になく真剣な面持ちであった。
「自分の世界を絶対に侵されたくはない、っていう強烈な意識が出て来るんですよ」
「詳しいな」
「そういう道の奴に知り合いがいるもんでしてね」
「ほう」
「おっと、だからといって俺がそうだってわけじゃないですよ」
「それはわかっているつもりだ」
この言葉には思わず苦笑してしまった。
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