第五十五話 刃の使い方その十一
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「跡を継ぐことになっているんだ」
「そしてその店をですか」
「大きくするよ、だが」
「だが、ですか」
「日本に来ているのは修行でね」
「それで来ているところに」
「声、あの声に言われたんだよ」
この辺りの事情は他の剣士達と同じだ。もっとも彼が日本にいることは彼にとってはたまたまのことであるが。
「日本に親戚がいるんで修行に子たらすぐに声をかけられたよ」
「ですか」
「お金があれば何でも出来るじゃない」
拝金主義と捉えられる言葉だったがスペンサーは平然と言った。
「いい話だからね、生き残ったら好きなだけ儲けられるっていうのは」
「元々生活は苦しくなかったと思いますが」
王の話を聞く限りではそうだった。
「それでもお金を」
「そこは人それぞれだよね。私は子供の頃からお金が好きなんだよ」
実に素直に言う。
「お金持ちになりたいってずっと思ってるよ」
「それでなのですか」
「お金があると困らないよ」
それこそ経済が崩壊しない限りだ。
「どうしてもというのなら金とか銀に替えておけばいいし」
「それか宝石か」
「そういうことも出来るからね」
だからだというのだ。
「やっぱり必要だよ」
「お金の為に戦われ人を倒す」
「倫理的に間違ってるとでもいうのかな」
「そこまでは言いません」
それはスペンサーも言わない。
「価値観の違いに過ぎませんし貴方にも倫理観はありますので」
「普通の社会では。剣士の戦い以外では戦わないよ」
そして誰も倒さないというのだ。
「他人をいたぶることもしないしね」
「それは何よりです」
「相手が誰であってもね。残虐なことも趣味じゃないよ」
王はここで自分でも言った。
「中国はそうした話が多いけれどね」
「確かに多いですね」
「それは人それぞれだよ。中国人全員が残虐じゃないよ」
偏見を抜きにして考えれば容易に答えが出ることであるが偏見が入っていれば決して辿り着くことの出来ない正解である。
「殆どはそうした人間じゃないよ」
「何時でもおかしな人間は一部ですね」
「アメリカでもそうだね。二次大戦でワシントンの桜を切ったのはごく一部だったよ」
そしてカルフォルニアの人種差別主義者もすぐに消えた。尚カルフォルニア州はアメリカの人種差別主義のメッカと言うべき恥ずべき歴史もある。
「馬鹿な人間、おかしな人間は常に一部だよ」
「それは統計にも出ています」
「全体の一割だね。私は九割に入っている自信があるよ」
だから大丈夫だというのだ。
「おかしな人間のつもりはないよ」
「わかりました。では私はこれで」
「やれやれ、作戦は失敗だよ」
「むざむざ乗ることもしないので」
スペンサーはわざと悔しそうな素振りを見せる王にこう返した。
「ですか
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