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京に舞う鬼
第十三章
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白い椿をあしらった赤い絹の鮮やかな着物を着せられている。そして木にかけられている。それはまるで木の間に座る少女の様にも見えた。確かにそれは少女であった。だが生きてはいない。そうした意味でそれは人形であると言えた。
 人を人形にして着飾り、そして飾っていたのだ。清水の舞台に。赤と緑のあまりにも陰惨な美をそこに現わしていた。
「また悪趣味な真似をしてくれていますね」
「ああ」
 警部は本郷の忌々しげな言葉に応えた。
「被害者は女子高生だ」
「またですか」
 見れば髪が黒く長い美少女だ。これも同じだった。
 血に塗れた顔で本郷達を見ていた。だがそこに表情はなく動くこともない。それが彼女が既に死んでしまっていることを如実に現わしていた。
「やはり良家のお嬢さんだそうだ」
「またしても」
「そしてそれを飾りますか」
「最初は池で次は橋、そして今度は木だな」
「はい」
「これには何の法則もないか」
「とりあえずはそう考えられますね」
 本郷は被害者がかけられている木を見ながらそう述べた。
「さしあたっては。というところですが」
「そうだな」
「百人一首とかね。和歌にしてももうちょっと風流ってのがあるんですよ。これはそれとは別ですね」
「ただ。死体を飾るのを楽しんでいるだけなのか」
「首に吊るし、そして架け」
 本郷は次に三つの殺し方に言及した。
「共通点はどれも殺し方が和風なところですね。犯人が鬼ならそれも妥当でしょうけど」
「鬼か」
「はい」
 今度は役が答えた。
「間違いないです。これを御覧下さい」
「むっ」
 役は懐から一枚の札を取り出した。それは真っ黒に焦げていた。
「この札はね、魔物の妖気に反応するのです」
「魔物の」
「そう、言うならばリトマス紙です。そして鬼に対しては」
「黒くなるのか」
「ええ。特に力が強ければこうして焦げます」
「そうか。では今度の魔物はかなり手強いな」
「ここまできて全く手懸かりがありませんしね」
「殺し方はやけに趣向を凝らしてますけれどね。今度は着物まで着せて」
「ああ」
「とりあえず被害者を下ろしてあげましょう。ずっとここで晒されてちゃ可哀想です」
「そうだな。おい」
 警部はそれを受けて左右にいる制服の警官達に声をかけた。

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