第四章
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「そういうものなのよ」
「そうなの」
「そう、だから」
それでだというのだ。
「忘れることよ」
「悲しいことは」
「そう、忘れるのよ」
私に顔を向けて話す。
「いいわね」
「悲しいことを忘れて」
「新しい方にね」
それに向かってだというのだ。
「楽しいことだけ、このことも消えていくものだけれど」
「覚える様にして」
「そうしてね」
こう話すのだった。
「いいわね」
「わかったわ。けれど今は」
まだ気持ちの整理がつかない、それでだった。
「こうしていていいかしら」
「いいわ、ただ夜になったら」
「冷えるからっていうのね」
「砂漠の夜はね」
この上なく冷える、砂漠の寒暖の差は尋常なものではなく夜に凍死する者すら出る。そうした過酷な世界なのだ。
だからだ、ガイドさんはこう私に言って来たのだ。
「いいわね、もうね」
「戻ってそうして」
「他の場所で楽しみましょう」
「飲もうかしら」
「いいお店を知ってるわよ」
エジプトはイスラム国家だ、だから本当は酒はないのだがこの辺りは観光で成り立っている国で細かいことは言わない約束だ。
だからだ、ガイドさんも私にそうした店について話してきたのだ。
「そこに今から。どうかしら」
「ええ、それじゃあ」
私はガイドさんのその申し出に微笑んで応えた、そしてだった。
二人で夜のカイロに入りそこで飲んだ、私は旅の中で彼とのことを忘れることに務めた、そうしてなのだった。
蜃気楼のことを思い出しつつも日本に帰った、すると少し寂しさがましになっていることが自分でもわかった。
それで旅行を勧めてくれた友達に少し微笑んで言った。
「少しだけだけれどね」
「寂しくなくなったのね」
「ええ、もう少し時間がかかるけれど」
「旅行はこうした時にいいのよね」
「気持ちを切り替えられるわね」
「だからいいのよ。じゃあまだ引き摺っているにしても」
彼とのことを、それでもだというのだ。
「また頑張りましょう」
「お仕事に。それに」
「新しい恋ね」
「終わった恋は忘れるに限るわね」
私は蜃気楼で見たことを思いだしつつ応えた。
「そのきっかけを掴めたわ」
「じゃあもう少し時間を置いて」
「後は時間は解決してくれるわ」
そのことは自分でもわかった、もうここからは時間だけだった。蜃気楼を見て全てが過去であり戻らないものだとはっきりわかったから。
「それが住んでからね」
「新しい恋も見付けるのね」
「そうするわ」
今は少しだけ微笑むことが出来た、今の私は蜃気楼ではなく砂を見ていた。あの砂漠の黄色い砂を、そして夕方の赤くなっている砂も。その黄砂の中にいたことも思い出しながらそのうえでこれからのことを考えだしていた、そうなれたことに嬉
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