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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第十七話「編入生」
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な言葉が飛び交う。この程度、俺たちのなかでは挨拶のようなものだ。


 革張りのソファーにどかっと腰を掛ける。


「それで、用件は?」


 婆さんは革張りの椅子に寄りかかると来賓室の方へ顔を向けた。


「お前に紹介したい娘がいる。――いいぞ、入りたまえ」


「はい、失礼します」


 扉の奥から鈴を転がしたような綺麗な声が聞こえてきた。


 ドアを開けて入室してきたのは、アレイシア精霊学院指定の制服とは異なる黒いドレスのような制服を着た少女だった。


 艶のある漆黒の黒髪がサラサラとカーテンのように流れ、涼しげな黒い瞳は真っ直ぐ前を向いている。


 綺麗な娘。それが、俺が感じた第一印象だった。


「……ふふっ」


 目が合った途端、微笑まれた。今まで受けたことのない反応だ。


「――? 俺の顔になにか?」


「いいえ、なにも」


 そういうが、少女は俺の顔を見つめたまま視線を外さない。顔に穴が開いてしまうのではないかと思うくらいジッと見つめてきた。


 少々居心地を悪くしていると、少女が桜色の唇を動かした。


「貴方が、リシャルト・ファルファーくんね?」


「そうだが、なぜ俺の名を?」


 口にしてから愚問だと気が付いた。男の精霊使いの情報はすでに世に流れているのだ。女しかいない精霊学院に男がいれば十中八九、男の精霊使いこと『リシャルト・ファルファー』にたどり着くだろう。


 しかし、少女が見せた反応は思い描いていたのとは違っていた。


「あら、もしかして気付いてない?」


「うん?」


「いえ、そうね……もう三年経つものね。気が付かなくても仕方ないのかしら。でも、それはそれで癪ね……」


 むぅと何故かこちらをジト目で睨むお嬢さん。


 正直何が何だかわからん。誰か説明を求む。


「人前でイチャラブとは、私への当てつけか?」


「どこをどう見ればイチャとラブに見えるんだ。見えていたら眼科と神経内科に行け」


「ふん、人を差し置いて二人の世界を作る不埒な奴に言われたくないな」


「作っているのは一人だけだがな。それで、この娘は?」


「ああ、彼女は――」


「学院長、そこからは私が話します」


 コホンと気を取り直した少女は優雅に片手でドレスの端を掴み、もう片手を胸に当てると小さくお辞儀をした。


 その見事な礼に思わず目を丸くする。


「今日からこちらの学院に編入することになったフィアナ・レイ・オルデシアよ。リシャルトくんと同じレイブン教室なの。よろしくね」


「編入?」


 編入とい
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