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京に舞う鬼
第十一章
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くそんなことが出来ます」
「そしてその蔓には紫の花が咲いていた」
「花が」
「そうだ、これはどういうことかな」
「明らかに季節外れですが」
「何か思うところはないかね」
「その蔓の事ですが」
「うむ」
 まずは役が尋ねてきた。警部はそれに応える。
「取調べはされましたか?」
「それは今行っているところだ」
「左様ですか」
「それの判定次第でさらに面白いことになるだろうな」
「その蔓、拝見させて頂けるでしょうか」
「蔓をか」
「はい。宜しければお願いします」
「わかった。ではこっちに来てくれ」
「はい」
 二人は警部について署内の地下に向かった。暗い階段を三人で降りていく。
 カツーーーーン、カツーーーーンという靴の音が響く。固いコンクリートを一段一段三人で降りていく。
「ところで血のことですけれど」
 本郷は階段を降りながら警部に声をかけてきた。
「それか」
「被害者の遺体には殆ど残っていなかったでしょう」
「その通りだ」
 彼は本郷の言葉に頷いた。
「やっぱりそうですか」
「殆ど抜き取られていたな。見事なものだ」
「どうやって抜き取ったかとかはわかりますか?」
「傷口からだ」
「傷口から」
「腹に縦に大きく切られた傷があったな」
「はい」
「そことは別に。もう一つ傷があったのだ」
「それは何処ですか?」
「喉だ」
 役に答えた。
「喉」
「そう、喉だ」
 今度は二人同時に言った。そして警部は二人に応えたのである。
「喉にな。こう傷があった」
 指で喉を横に掻き切る動作をしてみせた。
「スパッとな。どうやらそこから抜き取ったらしい」
「そうだったのですか」
「腹の傷は。また別の用途だった」
「別の?」
「中からな、内臓を取り出していた。一つ残らず」
「内臓を、ですか」
「まるで動物を食べる時の様な話ですね」
 本郷は嫌悪感を、役は表面上は何もないようで、それでいて内面に露骨に憎悪を露わにさせていた。
「だろうな。血はどうやら吸ったようだし」
「吸ったのですか」
「ただし、唾液やそういった証拠は残してはいない」
「綺麗に拭き取ったと」
「そもそもその傷自体が小さくて見つからなかった。一見しただけではな」
「また徹底してますね」
「指紋も何もない」
「それはまた」
「被害者の身体には証拠は何もなかったよ」
「寺での首と同じですね」
「そうだな」
 三人は自然に俯くようになっていた。話が袋小路に入ろうとしていたからだ。
 足取りが重くなるのがわかる。そして地下室へと歩いて行った。
「わかっていると思うが」
 警部は地下室の前で二人に対して言った。
「かなり酷いぞ」
「わかってますよ」
「こちらも慣れています」
「そうか、そうだった
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