VSマクワイルド
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おそらくは彼女の中では勝利までの道筋が見えているのだろう。
アレスのチームであるフレデリカが機械のまたいとこなどと酷い評価をされていたが、彼女に比べれば随分と人間味がある。フレデリカの場合はあくまで記憶力や事務能力が優れているというだけで、考え方や動作はごく一般的な女性だ。
ここまで機械的に効率よく攻め立てることなどはできない。
ま、それも善し悪しがあるけどな。
テイスティアが心配するのも理解ができた。
強い――けれど、弱い。
これがコンピュータ同士の戦いであれば、おそらくは無敗。
それなりに強い人間でも戦術シミュレーターであれば、負けはしない。
だが、戦場に出れば戦術的技能に劣る人間にすら敗北する。
コンソールの端に流れる損害は、青軍の各部隊の損傷を示している。
相手の赤軍よりも多いそれを一瞥すれば、アレスは苦笑した。
「確かに少ない、でも誰も死んでないわけじゃないんだよ、後輩」
諭すように呟かれる言葉が、狭い筺体に響いた。
コンピュータであるならばともかく、戦場であれば恐怖でミスもあるだろう。
誰もが彼女のように冷静に行動ができるわけがない。
彼女は、それを知らない。
例え狂ったとしても、彼女はおそらくは正確に立て直しはするだろう。
凡人をおき去りにしていきながら。
実戦ではおそらく司令官と参謀――さらにいえば、下士官との間で軋轢を生む。
優秀であれば、それらを無視して結果を出せば良いかもしれないが、現実はそれほど優しくはない。ちょうどあのラインハルトと同じ状況になるかもしれないが、彼は天才であると同時に他者を従える覇気があった。
そして、それこそがアレスが考える一番厄介な点だった。
戦術的才能や戦略家としての才能など、それに比べれば大したことがない。
そんなものは優秀な将が代わりにやってくれる。
彼に従えば大丈夫だと言う力――同じ天才でも、それが彼女にはない。
おそらくは彼女は正しい。
彼女の周囲が全て彼女ほどの能力を持っているならば。
あるいは全てがコンピュータであれば。
だが。
「正しい事が正解なわけじゃない」
アレスがそれを知ったのは、前世で就職してからであっただろうか。
正論は上からの命令に潰される。
自分が正論を言うためには、上に行くしかない。
だが、上に行けば、アレスの正論は正論ではなくなっていた。
いや、正確にはアレスも正論であることは知っている。
同時に、正論を貫いた結果に起こりうる結果までを理解してしまう。
だから、二度目の人生では後悔はしたくなかった。
元より死んだ身――ならば、今更という思いが、アレスの心にある。
しかし……それを例え天才と言われ
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