VSマクワイルド
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、しかし、アレスはライナの無茶な要望に笑う事はなかった。
ただ静かな瞳がライナを捉え、
「理由を聞いても?」
「戦いたいと思ったからです。それでは駄目でしょうか」
「駄目ではないが、理由ではないな」
苦笑するアレスに、ライナは言葉を重ねた。
「あなたに勝ちたいと思ったから」
ライナにとっては初めての挑戦だった。
おそらくはこれを逃せば、一生をつまらないと思い続けて生きることになるだろう。
そう思えば、簡単に諦めることなどできるはずもなかった。
アレスの目をそらすことなく、正面から見つめる。
アレスは小さく苦笑した。
ゆっくりと頭をかけば、手にしていたコーヒーを投げた。
「サミュール」
「はい?」
「やる」
「いいんですか?」
コーヒーを受け取り、サミュールは問いかける。
「今から戦いたいのだろう?」
「ええ。……それじゃ!」
「温くなったコーヒーはまずいからな」
「ありがとうございます!」
アレスの言葉に、ライナは勢いよく頭を下げた。
「いいさ。後輩が先輩に戦いを挑むってのは、良くあることだ」
「それは先輩だけだと思いますけどね」
サミュールが笑えば、アレスが小さく口を尖らせて歩きだした。
先ほど出たばかりの筺体へと再び近づいていく。
筺体に入ろうとしたところで、対面の筺体からライナが声を出した。
「マクワイルド先輩」
「ん?」
「全力でお願いします」
「ちょっと、フェアラートさん!」
筺体に足をかけたまま、アレスは目を丸くした。
ライナの発言に、思わずフレデリカは大きく声を出した。
さすがに失礼であろうと、周囲の人間も眉をしかめている。
ただ一人――ライナだけが真剣な表情でアレスを見ている。
しばらく彼女を見て、アレスは唇をゆっくりとあげる。
「サミュール」
「は、はい!」
「先ほどの件は取り消しだ」
「え……と」
「コーヒーを飲まずに、持っていろ。温くなんてならない」
+ + +
二つの艦隊が同じ星域で睨みあっている。
数は同数――共に一万五千の艦隊だ。
戦略を考慮に入れず、ただ互いの戦術能力だけを競う。
戦術シミュレータが導入された当初は、この想定しかなかったと聞く。
いまでこそ様々な想定が作られているが、単純に実力を競うという意味では、この戦いは人気があった。
その想定に、ライナは心でありがたいと思う。
自分は決して良い後輩ではないだろうと思う。
失礼なのは重々承知であり、断られてもおかしくはない。
それを黙って受け入れてくれたアレス・マクワイルドには感謝をしてもし足りない。
結果がどうあれ、謝ることになるだろう。
自分の我儘は聞い
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