VSマクワイルド
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アレスがいる。
こちらに背を向けて、いまだ気づいてはいないようだ。
同級生の挨拶もそこそこに、ライナはアレスに近づく。
三メートルも近づけば、アレスは気配に気づいて振り返った。
目つき悪く睨まれた。
おそらくは好かれてはいないのだろう。
当然と思いながらも、少し寂しい。
それでも表情には見せず、ライナは声を出した。
「お久しぶりですね、マクワイルド先輩」
「あーと。フォークと同じチームだった」
「ライナです。ライナ・フェアラート」
ライナは自分の胸に手をおいて名前を名乗った。
「ああ、俺はアレス・マクワイルド。と、名乗らなくても知っていたね」
「ええ。烈火のアレスの名前は有名ですから」
「名前負けしてなければいいけどね」
悪戯気に笑い、そう肩をすくめたアレスに、ライナは静かに頭を下げた。
「先日は失礼しました」
「なぜ?」
「わざととはいえ、失礼なことを言ってしまいましたので」
「正直だな、おい」
アレスが呟けば、周囲から小さく笑いが起こった。
いつの間にかアレスを囲むように、チームのメンバーが集まってきている。
随分と仲が良い。
少なくとも訓練終了後に、すぐに別れる自らのチームからは考えられないことだった。
「ま、気にしてないさ。で、何か用でも?」
「……」
と、強い視線がライナを捉える。
思わず黙ったライナに、アレスが怪訝そうに眉をひそめた。
どういえばいいのか、迷うライナの背後から笑い声が聞こえた。
「マクワイルド先輩は目つきが悪いんですから、恐がっちゃいますよ」
「目つきは生まれつきだけどな」
憮然とアレスが答えれば、再び笑いが起こった。
「まったく士官学校には碌な後輩がいないな。俺はもっと素直だった」
「アレス先輩の先輩方が聞いてたら、怒鳴りこんできそうな言葉ですね」
「サミュール。お前は何か、俺を誤解していないか?」
「リシャールから聞いたことを言っているだけですよ」
くすりと笑う言葉に、ライナは背後から声をかけた人物の名前を知る。
セラン・サミュール。
三学年まで学年主席をキープしており、今年こそテイスティアに抜かれてしまったが、その差は極僅か。この大会の結果次第では、再び学年主席に戻ることになるだろう。
強いはずだと理解して、同時に彼すらも簡単にあしらっていたことにライナは驚いた。
驚きは自然と言葉となり、声が出た。
「マクワイルド先輩。今から私と戦っていただけませんか」
と。
ライナの唐突な挑戦状に、周囲が笑みをやめて、驚いたようにライナを見ている。
集中する視線を無視して、ライナの銀色の瞳はただアレスを捉えていた。
笑われるだろうか。
感じた不安は
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