第十章
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第十章
「けれど札は焦げませんでしたよね」
「ああ」
「だったら。あの屋敷がたまたまであの人もそういう単に厳しいっているだけだったんですかね」
「そうだろうな」
「だったらまた犯人は別ですね」
「しかし鬼はこの京都にいる」
「京都に」
「間違いない、これだけは」
役の目と顔が剣呑なものも含んだ。
「この街の何処かにいる」
「鬼がですね」
「必ず見つけ出すぞ」
「ええ」
「そして倒す。いいな」
「わかってますよ」
本郷は真剣な顔のままざるそばを啜った。見ればもう綺麗に食べてしまっていた。
「おばちゃん」
それを見て店のおばちゃんに声をかける。
「ざるそばもう一杯」
「あいよ」
「食欲は健在みたいだな」
「安心しました?」
本郷はニヤリと笑って役に返した。
「君に食欲があるうちはな。大丈夫か」
「それはまたどうも」
「しかしざるそばだから別にいいな」
「これはカロリーが殆どないですからね」
そばはうどんに比べてカロリーがかなり低い。また腹持ちもうどんの方が上だ。だが味は決してうどんに劣ってはいない。うどんにはうどんの、そばにはそばの良さがあるのだ。
「幾ら食べても大丈夫ですね」
「問題は夏バテだが」
「それなら鰻をいきますか」
「それを言うと三河町の半七だな」
「けれど酒は好きですよ」
「だからなお悪い」
「祭までには終わらせて祭の間は酒と洒落込みたいですね」
「では働こうか」
「やっぱりそうなりますか」
こんな話をしながら昼食を終えた。今度は警部のいる署に向かった。
「丁度いいところに来たな」
警部は二人を見ていきなりこう言った。
「何かあったんですか?」
「この口ぶりからすぐにわかると思うが」
「また事件ですか」
「そうだ、今度は橋でだ」
「橋」
「三条の方だ。すぐに行くぞ」
「行くぞって警部もですか」
「当然だ。これは私の仕事でもあるからな」
警部は事務所に来た時とはうって変わって真摯な顔になっていた。
「行かなければどうしようもない」
「それでどの橋ですか?」
「三条小橋だ」
警部は役に答えた。
「あそこの下だ。では行こうか」
「はい」
「一息つく暇もないですね」
本郷の不満をよそに彼等は三条小橋に向かった。橋の下に着くとそこにはもう人だかりが出来ていた。
「これはまた」
「何ちゅうむごい」
京都弁の声が聞こえる。本郷と役は警部と共にその人だかりを越えて現場にやって来た。
「あっ、これは警部」
制服を着た警官の一人が彼に気付き敬礼をする。
「被害者は何処だ」
「あれです」
「あれか・・・・・・うっ」
警部はその制服の警官が指差した方を見て思わず絶句した。
そこには全裸の美しい少女がいた。そ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ