第一章
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った。
「池の中に」
「池」
「浮かんでいるものですよ」
「それはお魚か何かでは?」
そう言いながら彼も庭にある池へ目をやる。品のいいよく整った池である。如何にもといった感じの和風の池である。周りは白い石で飾られ、池の水も綺麗な青緑である。周りには夏らしくスイレンが咲いている。
だが一つ妙なものがあった。その綺麗な青緑の池の水の中に黒いものが見えるのだ。
「あれは」
「そう、あれです」
観光客は言った。
「あれは。何なのでしょう」
「はて」
それが何か一見しただけでは彼にもわからなかった。
「何なのでしょうね」
「わかりますか?」
「ここからでは。あっ」
丁度そこに寺のお坊さんが一人やってきた。
「いいところへ。あの」
「何でしょうか」
お坊さんはそれを受けてガイドと観光客に顔を向けてきた。
「あのお池ですけど」
「池がどうかしましたか?」
お坊さんはガイドの言葉に従い顔をその池へ向ける。
「何か黒いものが見えるんですけれど」
「黒いもの?」
「はい。それに」
「あっ」
観光客がまた声をあげた。
「何かまた見えてきましたよ」
「!?」
ガイドとお坊さんはそれを聞いてまた池を見た。見れば本当にまた別のものが見えてきた。白いものが黒いものの下に見えてきたのだ。
「何ですかね、あれは」
「さて」
少し離れた場所からはわかりはしない。
「宜しければ見に行って頂けませんか」
「はい」
この時は特に何も思うところはなかった。魚が死んだのか何かかと思った。黒いものは池の中の藻だろうかと軽く思っていた。しかしその予想は大きく裏切られることになった。
「やれやれ」
お坊さんは庭を歩きながら内心ぼやいていた。
「後で供養をしないとな」
その程度にしか思ってはいなかったのだ。まだ。しかし池の中を覗き込んでまずは我が目を疑った。
「えっ・・・・・・」
池の中にあるものはそこにある筈のないものだったのだ。思わず目を剥いた。
「どうしたんですか?」
寺の方からガイドが尋ねてきた。
「何だったんですか?」
「あ、あああ・・・・・・」
お坊さんは声を震わしながら後ろに二歩三歩と下がりはじめた。
「う、うわああああ・・・・・・」
「!?」
「どうしたんだろう」
そんなお坊さんの様子を見てガイドだけでなく観光客達も妙に思いはじめた。
「何かおかしいですね」
「ええ」
彼等は口々にこう言った。そして声を震わせるお坊さんに尋ねた。
「お池に何があったんですか?」
「そんなに驚いて。鯉か亀でも死んでいたんですか?」
「こんなことが・・・・・・」
「こんなことって」
彼等はそれを見て余計に不思議に思った。
「どうしたんですか、本当に」
「首が・
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