第5章 契約
第75話 夜の森
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の部分に目立つのは内側に向かい……つまり、お互い同士に向かって曲がって居る不快なふたつの角。その不気味なコウモリの羽根にも似た翼を広げて飛ぶ様と相まって、彼らこそが伝説に伝えられている悪魔と思わせるに相応しい姿形。
腕と脚が二本ずつ。この辺りは人間や、そして、今日の夕刻に出会った翼人と同じフォルム。但し、その手足の先にカギ爪の如き物が存在している点が、人間や翼人とは違う種族で有る事を窺わせる。
しかし、何より違うのは、その上空を飛ぶ生命体たちには、多くの棘を持った尾が存在して居た事で有ろうか。
「黒いコウモリのような羽根の有る怪物。あいつらがガーゴイルならば良いんやけど……」
かなり危険な予想を頭に浮かべながらも、最悪ではない方の予想を口にする俺。
いや、最早これは祈りに近いもの。あいつらが、俺の予想通りの連中などではなく、単なるガーゴイルであって欲しいと言う願望。
但し、ガーゴイルを扱うような貴族や、軍がこの近辺で動いて居るなどと言う報告を俺たちはイザベラから受けていないので……。
その刹那。樹木の上空で闇の中でもなお一層黒い影が躍動した。
そして次の瞬間、大きな音を立てて大地に這いつくばる黒い影。
一瞬の黒い疾風と蒼き光輝の邂逅。
遙か上空から一気に高度を下げ、俺とタバサをそのカギ爪に引っかけ、全体に針状の突起の有る尾を巻き付ける事により上空――自らの生息領域へと連れ去ろうとした黒き影を、俺と、そして、同じように半身に構えたタバサが迎え討つ。
仮にヤツらが超音速で飛行出来たとしても、此方も神の領域での戦いに身を置く存在。高速で飛行する物体が発生させる衝撃波などで、俺やタバサの精霊の護りを切り裂く事など出来はしない。
相手の爪が、そして尾が此方に届く正にその刹那。突然、俺。そして、タバサの手の中に現れる光輝。
鎧袖一触。急降下をして来た四体の魔物を下段より斬り上げられた一刀の元、無力化して仕舞う俺とタバサ。
その姿は正に比翼連理。完全に同調した達人同士の重なり。
地に転がり、のたうち回るその姿を何に例えたら良いのだろう。
不快なまでに痩せこけた肢体。更に、斬り上げた瞬間、分厚いゴムを斬り裂いたかのような手ごたえを感じさせた肌は漆黒。下から見上げた時に確認した悪魔の如き角、羽根、そして尾。
しかし、其処に存在する黒き影たちを、ヤツらだと確信させるのは……あるべき場所に顔が存在しない事。
「ヤツらは話す事もなければ、笑う事もない。伝承や書物に描かれている通りの姿やな」
まるで黒いストッキングを被った銀行強盗の成りそこないのような、その不気味な生命体を見つめながら小さく呟く俺。
いや、未だヤツらだと確
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