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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第75話 夜の森
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な内容を【念話】を使用して問い掛けて来る。
 もっとも、これは表面上で起きた出来事を取り上げると、かなり異常な出来事と言うだけ。少し考えると、この世界に召喚された俺にならば、こう言う事態が起きたとしても何ら不思議でも何でもない事が起きたと言うだけ。

【どうやら、彼女は命に係わるような重大な怪我に因る一時的な記憶喪失状態に陥って居るようで、自分が何故、ここに居るのかも理解出来ていないらしい】

 事実を有りのままに【日本語】で伝える俺。
 そう。俺には、このハルケギニア世界に召喚されて使い魔契約を交わした際に、相手の話した言葉を自動的に脳内で日本語に翻訳して貰える便利な自動翻訳能力が授けられて居ます。
 つまり、今まではガリア共通語と言う言語にしか接触して来なかったので感じた事は有りませんでしたが、可能性だけで言うのなら俺の授けられた言語の自動翻訳能力は、ガリア共通語以外のハルケギニア世界で人型の生命体に使用されている言語すべてに作用する可能性だって存在しているのですから。

 それに、今までも人間の発声器官では発声出来ないはずの邪神召喚用の呪文の意味が、何故か自動的に翻訳されて聞こえて来た事も有りましたから。
 まして、すべての翼人がガリア共通語を話して居るとは限りません。

 そもそも、ここは地球世界で言うのならスイス。フランス語がまったく通じないとは思えませんが、それでもどちらかと言うとドイツ語圏の方が多い国。更に言うと、このゴアルスハウゼンの辺りなら間違いなくドイツ語圏だったと記憶して居ます。
 流石に、俺のハルケギニア世界の知識の源のタバサでも、翼人の話す全ての言語。方言を知って居るとは思えませんからね。

 タバサに経過を告げた後、再び、翼人の少女の方に視線を戻す俺。不自然な空白の間も、俺の事を何故か訝しげな瞳で見つめ続ける翼人の少女。
 流石にこれ以上、そのまま。何の説明もせずに放置して置く訳には行きませんか。
 もっとも、

「怪我をして倒れていた貴女を治療する為に、ここまで運んだのです」

 かなり簡略化された事実のみを告げる俺。
 そう。その怪我がどう考えても人為的に付けられた傷で有ったとか、人間と翼人が現在、生息域を巡っての諍いの最中で有るとか言う部分を完全に無視した説明を行ったと言う事です。
 どうやら、彼女の発して居る雰囲気から察すると現在の状態に多少、困惑しているような雰囲気は感じますが、人間……。つまり、俺やタバサを恐れるような雰囲気は発して居ません。
 まして、嘘を吐く際に発せられる暗い感情の色も発して居る訳でも有りません。
 この辺りから推測すると、彼女は人間と翼人の間に発生した諍いの部分に関しても知らない……とは思えないので、一部の記憶を失ったと言う事なのでしょう。


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