第5章 契約
第75話 夜の森
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引き続き俺自身の完全なるコピー、飛霊を一体呼び出す。これで、俺の飛霊とサラマンダー。それに俺本人とタバサの合計の四人がこの村に存在しているのですから、かなり危険な事態が起きたとしても対処出来るはずです。
そう考えながら、再び周囲に探知用の気を飛ばす俺。
一瞬の空白。その隙間に、再び、タバサの手の中に有る書物のページが一枚、余分に捲られる。
大丈夫。東西南北、すべて異常なし。村の各所に配置した防御用の結界も問題なく展開して居ます。
ただ……。
ただ、漠然とした不安。
最初に行うべき、この村を守護する土地神の召喚に失敗している点が今夜の……。この世界のスヴェルの夜の危険度を証明しているようで……。
もっとも、だからと言って、この夜の内に危険を伴わない方法でこの地に起きて居る異常な事態の原因を調べる方法が有るかと言うと、そんな便利な方法が俺に有る訳でもなく……。故に、今はダンダリオンを通じてイザベラにゴアルスハウゼンの村で表面上からは見えないけど、何か危険な事件が進行中の可能性有りと言う連絡を入れて置くに止めて有ります。
夜の森。まして、ここが西洋風剣と魔法のファンタジー世界で有る以上、このハルケギニア世界の森の中にはオークやトロールなどの危険な魔物が数多く存在して居り、翼人のコミュニティも近くに存在している以上、探知魔法の効果範囲を広げて捜査を行ったトコロで、雑多な気を拾い上げて、その中のどれが一番危険なモノかを判断するには、このゴアルスハウゼン村の周囲と言う漠然とした範囲設定では少し範囲が広すぎますから。
イザベラに連絡を行って有るから、明日の朝には増援が送り込まれるのは間違いなし。故に、今夜一晩を現有戦力で乗り切れば、明日には積極的な捜査を開始して、今のゴアルスハウゼン村周辺で何が起きて居るのかを調べる事は可能だとは思うのですが……。
そんな、かなり消極的な思考の海に沈み込んでいる俺。
その瞬間。
一日の内で二度存在する、時計の針がまったく同じ場所を指す一度目の時の始まりと同時に、彼女の静謐な時間が終りを告げた。
世界が終った後も、きっと彼女はそうしているのだろうと考えさせずには居られない見慣れた体勢から、自らの膝の上に広げられた書物のページを静かに閉じ、僅かに顔を上げた少女は俺の顔を真っ直ぐに見つめる。
普段通りの紅いフレーム越しの蒼き瞳に俺を映す彼女。
そして、
「今夜から捜査は開始すべき」
……と、短く俺に対して覚悟を要求して来た。何時ものように、すべての感情を削ぎ落した何の感傷も感慨もない、ただ事実のみを突き付けて来る者の口調で。
しかし、故に良く磨がれた刃物の如き鋭さで、俺の心の弱い部分を斬り裂いて居た。
そう。彼女は間違いなく、
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