第一章〜囚われの少女〜
第十七幕『行方』
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された者を襲う、言いようのない喪失感。
何処にも届くことのない、祈りとも言えないような言葉を呟くのだった。
「ああ、せめて……。
せめて私をさらっていって……」
エリオが携えていた剣で、自らの胸を貫く。
ジュリエッタはエリオに寄り添いながら旅立っていった。
エリオとジュリエッタ、二人とも穏やかな表情をしていたのだという。
――惨劇の結末は、悲劇によって幕を閉じた。
それから歳月は経ち、他国の若き王子が新たな王となった。
そうして国は、平安を取り戻したのだという。
終幕。
「――物語はこれでおしまい。
エリオとジュリエッタ。
痛みもなく、傷一つない最期だったのだという……」
薄汚れたローブを身に纏う、怪しい人物による最後のモノローグ。
「歯車と歯車が噛み合うように人々は出会い、物語は動き始める。
この物語の悲劇の始まりは、一体いつだったのだろう……。
しかし気づく事が出来たのは、その悲劇に巻き込まれなかった私たち傍観者。
いや……悪なる感情に飲み込まれず、最善の手を尽くす事が出来ていたら……。
この惨劇は回避できたのか、それともできなかったのか。
二人は最後に幸せになれたのか……それは見ていた皆様にお任せするとしよう……」
怪しい人物はぶつぶつと呟きながら、舞台の袖に消えていった。
――
舞台の幕は下り、会場はカーテンコールの拍手の嵐に包まれていた。
役者を務めた皆は、誇らしげに観客に向かってお辞儀をした。
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