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皇太子ルードヴィヒの肖像
秘密のしるし吹き散るままに
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 「それにしても、生き写しとはまさにこのこと。巷の噂に思わず頷きそうになりますな」
 「……」
 夢見るようであった貴婦人の表情が苦渋に満ちたものに劇的に変化するのを見て、アルフレット・ブルーノは失言を悟った。
 「ついて参れ」
 アルフレット・ブルーノとロルフがエリザベートに案内されたのは薔薇園であった。
 エリザベートの姿を見て取ると、園丁たちがさっと頭を下げる。
 かつての新無憂宮、フリードリヒ四世の薔薇園に比べればごくささやかながら、よく整えられた薔薇園の一角。一面を覆い尽くす青い薔薇の中からエリザベートは一輪を折り取った。
 「『朝露の羽化』ですな。花言葉は確か『秘密』とか」
 「そうじゃ。かつては恐ろしくて口の端にものぼせられなんだが、そなたらの主人の功、もはや叢に潜む蠍もおらぬ。おったとして老い先短い身、今更構いはせぬ」
 晴れていた空は厚い雲に覆われていた。遠くに雷が不気味に響く。遠からず、雨が降るであろう。
 手の中で弄んだ青い花の花弁を一枚一枚ちぎり取り、吹き始めた寒風がそれを吹き散らすままにしながら、エリザベートは語り始めた。
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