第一部「吉良吉影は眠れない」
第六話「トレーニング」
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かし…結局は遅刻という形での登校となってしまった。こんな事如きで恥を受けるのは初めてだ。近頃、災難に見舞われているような…。
「ぉー。吉良様、どうしたんだ?遅刻なんてらしくねぇじゃねえかよぉ〜。」
「うるさい。私に気安く話しかけるな。」
机の上に伏し、沈んでいる私を見てもなお空気など読まないと言わんばかりにいつものように有伍が私に絡んでくる。しかし今日だけは勘弁して欲しいものだ。
「そんなことツレねぇこと言うなよぉ〜。そうそう、この間の先輩ぶっ飛ばしてたけどよぉ〜、何かわかったのか?」
「…。まぁ、恐らく、組織が関係しているんだろうな。」
「組織?」
「あぁ…そうだが?」
有伍は少し複雑そうな顔でそう聞き返した。彼のそのような顔を見たのは初めてだ。何かあるのだろう。彼は単純かつバカの極みだからな、わかりやすい。
「なんだ?何かあるのか?」
「ん?ぁ…うん。なんでもない。」
有伍は軽く私の問いを受け流し、うわの空を向いているようだった。やはり、彼は重大な何かを隠している。
「そうか。ならいい。」
「ぁ…おぅ。」
そう言うと、有伍は自ら自分の席へと戻って行った。彼らしくない。彼なら素直に自分から退くことはない。しかし、今…私からの詮索を避けるかのように自分から一歩身を引いたのだ。尾行は今日決行しよう。
放課後______。
私は有伍が校門を出ることを確認し、気づかれずに尾行することにした。今の所は気づく気配もない。やはりこいつはバカなのか?彼との距離は5mを切っていて…なおかつ私は身を隠していない。どうどうと後ろから普通に彼の後を追うだけだ。一般人ならすぐに気づくであろうが、こいつは気づくことさえない。ただ自然と家への帰路を進んでいるだけ…。まるで私をおびき寄せるためのようにも見える。しかし、彼がそんな事を考えるだろうか?いや、ないだろう。
コツコツコツ…。
「…。」
息を殺して徐々に距離を詰めるが、やはり気づかない…気づく様子もない。どこかおかしいのだろうか?と思っていた最中、有伍が自宅へと入って行った。
「ここ…か。」
有伍は結局のところ最後まで私に気づくことはなかった。ここまで行くとある意味尊敬できる。もし私が彼なら恐らく気づく、いや、気づかなければおかしい。もしくは知った上でおびき寄せ、口止めをする。の二択といったところか…。しかし…本当に不用心だな。
「別に変わった様子はないようだな。はぁ…。やはりバカなだけか…。特に詮索する意味もないな。帰るか…。」
「まて…。まてよ。」
いくら有伍がバカであったとしても必ずしも気づかれていないとは限らない。考えが甘かったか…どうやら私は既に誰かに監視されていたようだ
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