第四章
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はよくある関係だった。弁護士にしろその全てが善人というわけではないのだ。悪人もまた存在している。どの世界でもそうであるように。
「そいつがそうした医者に話をして。それで」
「臓器売買か。確かに金になるからな、あれは」
「それであんな豪華なマンションに一人で住んでいたんですよ。碌に職もないのに」
「ドス黒いものだ」
役はここまで聞いて一言述べた。
「また随分とな」
「事件自体は簡単に終わったんですけれどね」
本郷はここまで話して上を見上げた。そのうえで大きく嘆息した。
「随分と嫌な事件でしたね」
「真相を知ればな」
「妖怪だって残忍なものですけれどね」
これは二人が最もよくわかっていることだった。妖怪達の多くの凄惨な流血の場面を見てきているからだ。しかしその彼等が後味が悪いと言えるだけのものがこの事件にはあった。
「それでもこれは」
「人間もまた残忍なものだ」
役は言った。
「長い間それを見てきたつもりだがな。何度見ても」
「長い間ですか」
「そうだ。長い間だ」
今のこの言葉を否定しないのだった。
「どれだけ見ても。慣れはしないな」
「そうですか」
「何はともあれ事件は終わった」
これは確かなものにするのだった。
「これでな」
「終わりですね。確かに」
「どうする?何処かに行くか」
「美味いものを食いにですか」
「金は入った」
前川からの報酬だ。それはもう二人のところに振り込まれたのだ。
「これで何処かに行くか」
「何処かと言われましてもね」
だが本郷は。いつもの明るさを見せずに言うのだった。暗い調子で。
「今はあまり食欲がないです」
「そうか。君しては珍しいな」
「一日だけ待って下さい」
一日と言った。
「そうしたらまた復活しますから」
「明日になればすぐに仕事が来るかも知れないぞ」
役はこう彼に忠告した。
「新しい仕事がな」
「その時はその時ですよ」
上を見上げたままの言葉だった。これまでと同じく。
「仕事をするだけです」
「そうか」
「というかこんな事件は早く忘れたいですね」
「全くだ」
これに関しては本郷と同じ意見だった。
「内臓を売る為にか」
「どうもね。そういう話は駄目なんですよ」
相変わらず上を見上げたままの言葉であった。
「おぞましいものがあって」
「人もわからないものだ」
役はまた言った。
「化け物と変わらない人間もいる。どんな悪事をしても平気な人間がな」
「それが人間なんでしょうね」
本郷は素っ気無く述べた。
「結局のところは」
「そうかもな」
役も本郷の言葉に言葉を返すことなく頷いた。事件こそ終わったがどうにも後味の悪い、人間というもののある一面をあらためて見た、そうした事件であった。二
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