暁 〜小説投稿サイト〜
コールドクリーム
第二章
[1/3]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

第二章

「え、ええ」
「ごく稀にこうした存在がいます」
「こうした存在とは」
「全くモラルがないという存在です」
 モラルという言葉を出してきたのだった。
「モラルですか」
「はい。どんな悪事を働こうが平気な人間」
 およそ最悪の人間である。
「そうした人間は不幸にして実際にいるもので」
「ではこいつは」
「私もまた職業柄多くの顔を見てきています」
 本郷と全く同じ言葉だった。また隠しているものも同じである。
「その経験から見たところ」
「ではこいつは娘を」
「率直に申し上げます」
 役の言葉は静かだが実に鋭いものになった。
「宜しいでしょうか」
「え、ええ」
「おそらく娘さんは既に」
「・・・・・・左様ですか」
 こう役に告げられてがっくりと肩を落とすのだった。落胆を越えたものがそこにあった。
「やっぱり。あいつは」
「ですが。仇は取れます」
「仇は」
 本郷の言葉にすぐに顔を上げた。何とか。
「だから俺達がいるんですよ」
「貴方達が」
「さっき言いましたよね」
 笑ってはいない。真剣な、強い眼差しで前川を見据えての言葉だった。
「三日で事件を終わらせてみせると」
「ええ、確かに」
「俺は約束は絶対に守ります」
「私もです」 
 役も述べてきた。
「ですから御安心下さい」
「必ず事件は解決しますよ」
「そうですか」
「何、楽なものです」
 また笑って述べてみせる本郷であった。
「こうした人間が起こす事件ってのはね」
「人間が!?」
「あっ、こっちの話です」
 怪訝な顔になった前川に対して言葉を言い繕って消した。
「御気になされずに」
「そうですか」
「では。そういうことで」
 こうして依頼を受けることが決まった。前川は去り事務所には本郷と役だけになった。二人になると本郷はすぐに役に対して言うのだった。
「今回はまたえらく普通の仕事ですね」
「そうだな。しかも急に入ったな」
「ええ」
 役の言葉に頷く。
「こんなこともあるんですね」
「そうだな。ところでだ」
「何ですか?」
「まだ容疑者のところに行っていないがどう思う?」
「クロでしょうね」
 直感でこう答えた本郷だった。
「間違いなく」
「君もそう思うか」
「まあまずは容疑者のところに行ってみましょう。そうしたら全てがわかります」
 こう答える。それからまずは事務所を出た。それからその足で容疑者のマンションに向かった。そのマンションは一人暮らしの男にしてはやけにいいものだった。
「どうやってここに一人で暮らしているんでしょうね。しかもあれですよね」
「無職だ」
 役は述べた。
「高校中退後碌に働きもせずだ。ぶらぶらしているらしい。それでこのマンションはな」
「そうですよ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ