第百六十一話 別離
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これを見てくれ」
「何ですかこれは」
その資料には、一人の少女と母親らしい人物が写っていた。
「母親のローザライン・エリザベート・フォン・クロイツェルと娘のカーテローゼ・フォン・クロイツェルだ」
「この二人はいったい?」
「ヤンも見た事があるんじゃないか?」
「初めて見ますが」
「一躍有名になったシンデレラさ」
シンデレラ、シンデレラ、あっあの逆亡命の話か。
「やっと判ったようだな、ヤン准将」
「逆亡命して伯爵令嬢になった話ですね」
私の指摘に本部長も先輩も肯定する。
「その伯爵令嬢だが、彼女の母親もスパイだったという疑念を情報部は考えている」
「しかし、逆亡命など幾らでもあるはずです、以前マンフリート二世は同盟から帰国して皇帝に即位していますし」
「そうなんだがな、この親子の場合、父親が問題なんだ」
「この資料には父親の項目がありませんが?」
「ああ、私生児なんだが、父親は判明した」
父親がいる以上、帝国へ行く可能性が少ないはず、既に亡くなっているのか?そう思う私の考えの斜め上の答えが、本部長から話された。
「この子の、父親の名前は、ワルター・フォン・シェーンコップ、ローゼンリッターの副連隊長だ」
ローゼンリッターと言えば、ヴァンフリート星域会戦で部隊ごと捕虜になった。
「情報部としては、元々シェーンコップ中佐の動向を注目していたのだよ」
「何があったのですか?」
「中佐は常日頃から、現体制に批判的な言動を続けていて、クーデターを起こすのではないかと危険視されていたのだよ」
「しかし、元々亡命者達は不当に扱われてきましたから、不平不満が上がるのも多々有ったはずですが?」
「そうなのだが、今回のヴァンフリート4=2後方基地は軍内部でも殆ど知られていなかったにも係わらず、帝国軍は真っ直ぐに後方基地を攻略している。とても偶然とは思えないのだよ」
確かに、あの手際の良さは異常と言えた。
「其処で、フェザーンからの情報で、スパイ疑惑が上がった以上、シェーンコップ中佐に関して情報部が調べた結果、クロイツェル母娘の存在が浮かび上がったと言う訳だ」
「しかし、ローゼンリッターと言えば、最前戦で他より多量に血を流してきています。そんな彼等が裏切るなど」
「しかし、ローゼンリッター歴代連隊長の中でも五名が逆亡命している、その辺を情報部が危惧したのだよ」
「其処で、調べた結果、シェーンコップ中佐の娘が帝国へ帰国後、伯爵位を受けた上に、テレーゼ皇女の義妹として優遇されている事が判った。逆亡命者が帝国でこれほどまでに優遇された例が存在しない、更に皇位継承者と共にいる事態が異常だ。これにより情報部はシェーンコップ中佐が限りなく黒だと践んだ」
「しかしそれは憶測による物でしょう」
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