第百六十一話 別離
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入れるのが旨いミンツ大尉がスパイなどあり得ない!
「ミンツ大尉がですか、あり得ない事でしょう」
「俺もそう思うさ、あのミンツ大尉がスパイの訳がない」
「じゃあ、なぜ、情報部は?」
私と先輩の会話を黙って聞いていた本部長が徐に話し始めた。
「ヤン准将、証拠が挙がったのだよ」
本部長の話しに私は怪訝な顔をした。
「本部長、証拠とは?」
「同盟軍が作戦を行う事が統合作戦本部で決まった時期にフェザーンにあるミンツ大尉夫人名義の口座に多額の資金が振り込まれていたのだよ、しかもその作戦終了後にも資金が振り込まれている」
資金を提供、確かに可能性ではあるだろうが、帝国が離間の策をしている可能性も有る。
「本部長、しかしそれだけでは証拠としては弱いでしょう、帝国が態とその様な事をしている可能性もありますし」
私の反論に本部長も眉間に深い皺を目立たせながら答えてくれる。
「私も、その事は考えたのだが……」
本部長はそう言いながら先輩の方を見て目配せする。
目配せされた先輩は、本部長に代わり説明し始める。
「俺の方でもその辺を調べたんだが、くだんの口座だが、ミンツ大尉が帝国からの亡命貴族の令嬢と結婚後に開かれた事が判明している。その上で作戦毎に資金が振り込まれているんだ。
しかも口座の名義は最初は夫人で夫人死亡後にはユリアン名義に変更されている。更に、ミンツ夫妻の資料や写真は全て彼の母が焼却処分している上に、彼の母親、ユリアンに取っては実の祖母なのにも係わらず、異常なほどユリアンを虐待していた。
つまりだ、情報部としてはユリアンの祖母はミンツ家が長征一万光年の参加者の子孫であることを誇りにしていたからこそ、家から裏切り者が出た事が発覚する事を恐れて証拠隠滅したのではないかと疑っている訳だ」
「本部長も先輩も、荒唐無稽な事で、ユリアンを私から引き離せと言うのですか!」
先輩の説明に私も反論せざるを得なかった。
「違う、俺もこの話は荒唐無稽だと考えているし、本部長も同じ考えだが」
先輩の説明に本部長も頷いてくれる。
「無論、私とて、ユリアン君がスパイなどとは思ってはいないが、情報部としては疑いの目で見ている事は確かだ」
「ユリアンはどうなるんですか?」
情報部云々よりユリアンの事が心配だ。
「一時的に、准将の家から施設へ戻し、事実関係を調べた後で、然るべき相手を選ぶ事に成るかも知れない」
つまりは私から引き離せと言う訳か。
「それでは、ユリアンが可哀想すぎます」
私に指摘に本部長も先輩も済まないと頭を下げてくれるが、そんな事よりユリアンの事を何とかして欲しい。
「ヤン准将、今回の件はユリアン君だけでは無いのだよ」
本部長の言葉に、先輩が資料を見せてくる。
「ヤン、
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