第百六十一話 別離
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ヤン・ウェンリー
私がハイネセンへ戻ってから一ヶ月後、再度、統合作戦本部長シトレ元帥の下へ出頭を命じられた。
「ヤン准将、出頭しました」
「入りたまえ」
今回も本部長室にはキャゼルヌ先輩が先に来ていた。
「本部長、キャゼルヌ准将、今回は何があったのでしょうか?」
私としては、先頃出したヴァンフリート星域会戦のレポートに関する事だと思っていたのであるが、本部長(シトレ元帥)と先輩(キャゼルヌ准将)の顔を見ると、思案している顔であり、何か有ったのかと直ぐに判った。
「本部長、何かあったのでしょうか?」
本部長に聞くと、先輩が苦虫を噛み潰したような顔をしながら喋り始めた。
「忌々しい事だが、情報部の防諜課から、照会が来ている」
「何がですか?」
「うむ、最近我が軍の作戦が敵に知られているのではないかという疑念だ」
「それは、考えすぎでは?」
「いや、余りに手際が良すぎるのだよ。第5次イゼルローンの平行追撃だが、敵に知られていたらしい」
「まさか、敵は知りながら味方ごと殴殺したのですか?」
先輩の言葉に私は驚いた、確かにあの時の敵の動きは可笑しいと言えたが、味方ごと殴殺出来る物だろうか?
「それはそれ、どうやらイゼルローンの要塞司令部と駐留艦隊司令部がお互いに啀みあった結果、此方が平行追撃を行うと言う統帥本部情報部からの情報を無視したらしい」
「まさか、其処まで愚かだとは」
「何でも、現地に派遣されていた兵站統括部の一中尉でさえ、平行追撃に気が付いて指摘していたらしいが、それも無視したようだ」
「そう言う事だ、帝国らしいと言えば帝国らしい事態だな」
「人命より帝国の安全を取るですか」
「向こうには有権者や政党なんぞは存在しないからな」
「人命軽視でも何ら問題にならん訳だ」
呆れたと同時に帝国の恐ろしさが嫌なほど感じて気持ちが悪くなる程だ。
「それとヤン、実はな……」
先輩が非常に辛そうな顔で話しかけてくる。
「キャゼルヌ先輩、何か有ったのですか?」
「実は、ユリアンの事なんだが」
「ユリアンがどうかしましたか?」
「情報部から、ユリアンをお前の所に置いておくのは不味いと指摘が来てな」
ユリアンを私の頃に置いておけない?私が生活不能者でユリアンに家事をさせて居るから、児童虐待とかなのだろうか?
「なぜですか?一人暮らしだからでしょうか?それともユリアンに家事をさせているからなのでしょうか?」
私の指摘に先輩は困った顔をしながら答えてくれた。
「いや違うんだ、ヤンが生活破綻者である事が原因じゃない。忌々しい事だが、ユリアンの父親で戦死したミンツ大尉が帝国のスパイだったという疑惑が、フェザーンからの情報で判ったと言うんだ」
あの紅茶を
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