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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第33話 「顔の無い怪物」
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てる相手じゃない。戦場では勝てない。なにせ戦場に出てこないからな。
 倒そうとすれば、オーディンまで攻め込んでいくしかない。
 そんなやつを相手に、どうやって勝てばいいのか。
 残念ながら、俺には考えても分からなかった。
 ヤンには分かるのだろうか……?
 ジッと考え込むように黙り込んでいるヤンを見ながら、そんな事を思っていた。

 ■宰相府 アンネローゼ・フォン・ミューゼル■

「皇太子殿下、さすがに顔色が悪いですよ。一度ゆっくりお休みになられてはどうですか?」
「そうです。倒れたりしたら元も子もありません」

 マルガレータさんとエリザベートさんが心配そうに言います。
 わたしはそっと皇太子殿下のそばへと近づいて、体を支える振りをしました。

「そうか、今日のところはもう休むとするか……」

 一瞬、殿下がよろけましたね。
 大層お疲れのご様子。ふふふ。

「殿下。さ、わたしが支えますから、お部屋へ向かいましょう」
「悪いな、アンネローゼ」
「いえいえ、これぐらい当然です」

 宰相府の廊下を右に折れ、わたしの寝室へと向かいました。
 いつもなら左に折れて、皇太子の間を通り過ぎて、お部屋へ戻られるというのに、それすらお気づきになっていないご様子。
 ふふふ。計画通り。
 要望書も嘆願書も決裁もいつもなら、わたしが他に回すであろう物でも、殿下に決裁を求めた甲斐がありました。
 アレクシアさんが懐妊していらい、お相手を勤める事ができないのですから……。
 それはもう、わたしの出番でしょう。常識的に言って。

「うん? この部屋は?」

 ちっ。気づいたか、目ざとい方ですね。
 しかしもう遅い。
 ここはわたしの部屋。わたしの狩り場です!!

「ふふふふふふふふふふふ」
「ま、まさか、何をする気だ」
「よいではないかよいではないかー」
「あ〜れ〜」
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