第33話 「顔の無い怪物」
[5/5]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
てる相手じゃない。戦場では勝てない。なにせ戦場に出てこないからな。
倒そうとすれば、オーディンまで攻め込んでいくしかない。
そんなやつを相手に、どうやって勝てばいいのか。
残念ながら、俺には考えても分からなかった。
ヤンには分かるのだろうか……?
ジッと考え込むように黙り込んでいるヤンを見ながら、そんな事を思っていた。
■宰相府 アンネローゼ・フォン・ミューゼル■
「皇太子殿下、さすがに顔色が悪いですよ。一度ゆっくりお休みになられてはどうですか?」
「そうです。倒れたりしたら元も子もありません」
マルガレータさんとエリザベートさんが心配そうに言います。
わたしはそっと皇太子殿下のそばへと近づいて、体を支える振りをしました。
「そうか、今日のところはもう休むとするか……」
一瞬、殿下がよろけましたね。
大層お疲れのご様子。ふふふ。
「殿下。さ、わたしが支えますから、お部屋へ向かいましょう」
「悪いな、アンネローゼ」
「いえいえ、これぐらい当然です」
宰相府の廊下を右に折れ、わたしの寝室へと向かいました。
いつもなら左に折れて、皇太子の間を通り過ぎて、お部屋へ戻られるというのに、それすらお気づきになっていないご様子。
ふふふ。計画通り。
要望書も嘆願書も決裁もいつもなら、わたしが他に回すであろう物でも、殿下に決裁を求めた甲斐がありました。
アレクシアさんが懐妊していらい、お相手を勤める事ができないのですから……。
それはもう、わたしの出番でしょう。常識的に言って。
「うん? この部屋は?」
ちっ。気づいたか、目ざとい方ですね。
しかしもう遅い。
ここはわたしの部屋。わたしの狩り場です!!
「ふふふふふふふふふふふ」
「ま、まさか、何をする気だ」
「よいではないかよいではないかー」
「あ〜れ〜」
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ