第33話 「顔の無い怪物」
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
する失望は、どん底に落ちるかもしれん」
宰相閣下のお身は是が非でも守らねばならん。
そうでなければ、帝国そのものが崩壊するやもしれんからな。
ロイエンタールは俺にも、はっきりと分かっていない危機感を自覚しているのかもしれん。
ただ宰相閣下を守らねばらん事だけは理解できる。
■自由惑星同盟 統帥作戦本部 アレックス・キャゼルヌ■
「おいヤン。聞いたか」
ヤンの奴が顔を見せたとき、思わず問いかけてしまった。
後ろにいるアッテンボローが目を丸くしている。
「なんですか先輩、いきなり」
「いや、すまん。イゼルローンで行われる捕虜交換に、あの皇太子が来るそうだ」
「そりゃすごい」
アッテンボローが興味津々といった感じで、紙コップに入ったコーヒーを差し出してきた。
「噂の皇太子を直接見る、いい機会ですね」
「ああ、政治家連中が我先にという感じで、捕虜交換の調印式に出たがっているぞ」
「会ってどうするつもりなんでしょうね」
「さあ〜」
実際のところ、会ってどうなるものでもあるまい。
和平交渉をしようにも、あの皇太子、それほど甘くはないだろう。
「ただ、どういう人物なのか、俺も興味がある」
「ルドルフのようなタイプでしょうか?」
「アッテンボロー、それはないと思うよ」
「そうですか?」
「そうだな、そんなに分かりやすいタイプではないだろう」
「二面性ですか?」
「そうだね。“皇太子の二面性”と呼ばれるものだと思う」
皇太子の二面性。最近になってハイネセンで、よく話題になる言葉だ。
冷静さと強引さ。寛容と苛烈さ。我慢強さと行動の早さ。
どれもこれも相反するものだが、そのどれもが皇太子の中で両立している。
だから読みにくい。
次に何をしようとしているのかは、分かってもどれから手を打つのかが読めない。
「厄介な相手だ」
俺がそう言うと、ヤンがポツリと漏らした。
「皇太子とは心理戦をするべきではないですね。遣り合うのであれば、正面から物理的にぶつかる。これしかないでしょう」
「決戦主義か?」
「他の人物が相手なら、心理戦は有効です。ですが皇太子には、無意味です。戦略レベルで圧倒してきますよ。手も足もでないぐらいまで追い込んでくる。それも我々がまさかと思うレベルです。ここまでしないだろう。ここまでする訳ない。そう思うぐらいまで追い込んできますよ」
「勝敗は戦場の外で決まるか」
「武力行使は、その上での事。分かりやすい形で勝敗を認めさせる手段でしかない」
「皇太子は、そういうタイプですか……」
「少なくとも戦場に引っ張り出す事はできないだろうね」
ヤンの顔色が少し悪い。
相手は本物の専制君主だ。
軍人レベルで勝
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ