マザーズ・ロザリオ編
終章・全ては大切な者たちのために
紅紫の剣舞、そして―――
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少し前の空を切っていた。レイの体勢は全く変わっていない。狐に包まれたような表情をしているユウキに微笑、動き出しを全く気づかせない歩法でユウキに肉薄すると大太刀から離した左手を手刀の形にし、彼女の首元に添える。
対戦が始まって盛り上がりかけた観衆が水を打ったように静まり返った。
「……すごいな、ユウキは」
硬直したユウキにレイは2人きりで話す時のような声色で話し掛けた。
「まだあれから少ししか経ってないのにまるで別人だ」
視線を足元にやる。レイはユウキの左足の爪先を右足で軽く押さえていた。彼は苦笑しながら続ける。
「あの横薙ぎをかわされる事を折り込んでその先、蹴りで体勢を崩してからのサブアームでの追撃、か…………戦略的には悪くないが、相手が悪かったな」
レイに小細工は通用しない。相手の武器や手足の動きを追うのでは無く、相手の存在それ自体を『個』と見なし『観の目』で戦況を見ている彼を出し抜くのはかなり難しい。
とは言ってもコレは普段のレイが絶対にやらない、自らに課した『禁忌』の範疇に属するプレイヤースキルだった。
「……これが螢の、本気?」
「そうだ。木綿季―――」
全て見せよう。木綿季を助ける為に身に付けた、螢とレイの『本気』を。
だから、
「お前が生きてきた証を、未来への希望の力を……俺が助けようとした木綿季の力の全てを、見せてくれ」
再び流れるように離れる。伝えるべき事は伝えた。これで最後……
俺とレイが彼女に伝え、見せる、最後の戦いだ。
「……分かった。いくよ!!」
ユウキの姿が消える―――右真横からの突きに『焔鎧』が反応し、防御。
しかし、ユウキの斬撃は通常攻撃でも凄まじい攻撃力を持つ。焔鎧に威力を削がれるが、動きは止まらずに剣はレイへと迫る。
だがレイはその剣の切っ先を親指、人指し指、中指で摘んで止めると反対からカウンターの斬撃を放った。
ユウキの肩口に吸い込まれようとしたそれは鎧にヒットする寸前で白銀の剣閃に阻まれる。
ユウキの左手に握られているのは白い輝きを放つ古代級武器、《アスカロン》。
ウンディーネ領沖合いに出現した高難易度ダンジョン『龍皇の血塔』のボスのラストアタックボーナスで出現した白銀の両刃片手直剣だ。
「……やあッ!!」
逆手に持っていたそれを順手に持ち変え、弾かれた反動で泳いでいた大太刀を強打してレイの姿勢を崩す。
そのおかげで緩んだレイの右手から最初の剣を回収するとそれを逆手に持った。
―――かつて、水城螢と茅場晶彦がソードスキルを作成した時に《二刀流》と代わって削除された武器スキル《双剣》
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