第二章 風のアルビオン
第三話 襲撃と空賊
[10/14]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
わせた。こちらにピタリと二十数個も並んだ砲門を向けている。
「アルビオンの貴族派か? お前たちのために荷を運んでいる船だと、教えてやれ」
見張り員は、船長の指示通りに手旗を振った。しかし、黒い船からは何の返信もない。
副長が駆け寄ってくると、青ざめた顔で船長に告げた。
「せっ、船長! あの船は旗を掲げておりません!」
副長の言葉を聞いた船長の顔は、みるみるうちに青ざめていった。
「しっ、してみると、く、空賊か?」
「間違いありません! 内乱の混乱に乗じて、活動が活発になっていると聞き及びますから……」
「にっ、逃げろ! 取舵いっぱい!」
船長は船を空賊から遠ざけようとしたが、その時にはすでに黒船は併走をし始める。
黒船から、士郎たちの乗り込んだ船の針路めがけて、脅しの一発が放たれた。
ぼごん!と鈍い音がすると、砲弾が雲のかなたへ消えていく。
黒船のマストに、四色の旗流信号がするすると登っていく。
「停止命令です! 船長!」
船長は苦渋の決断を強いられた。この船にも武装がないわけではないが、相手の片舷側だけで二十数門もある大砲にくらべ、甲板の上に、移動式の大砲が三門しかない。
船長は助けを求めるように、隣に立ったワルドを見つめた。
「魔法は、この船を浮かべるために打ち止めだよ。あの船に従うんだな」
ワルドは、落ち着き払った声で言った。船長は口の中で「これで破産だ」と呟くと、命令した。
「裏帆を打て。停船だ」
いきなり現れ、砲撃を仕掛けてきた黒船と、行き足を弱め、停戦した自船の様子に怯えてルイズは、隣に立っている士郎の外套をますます強く握り締め、不安そうに黒船を見つめた。
「空賊だ! 抵抗するな!」
黒船から、メガホンを持った男が大声で怒鳴った。
「空賊ですって!?」
ルイズが驚いた声で言った。
黒船の舷側に弓やフリント・ロック銃を持った男たちが並び、こちらに狙いを定めた。
鈎のついたロープが放たれ、士郎たちの乗った船の舷縁に引っかかる。手に斧や曲刀などの得物を持った屈強な男たちが、船の間に張られたロープを伝ってやってきた。その数おおよそ数十人。
士郎は現れた男たちにどこか違和感を感じながらも、いつでも抜けるように剣に軽く手を当て、空賊たちを観察していた。
「シロウ……」
ルイズが不安そうに士郎に寄り添うと、背後から現れたワルドが声をかけてきた。
「ここで暴れるのは得策ではないな」
「そのようだな」
ワルドの言葉に、士郎がチラリとこちらに狙いをつけている大砲に目をやると、剣から手を離してワルドに向き直り、前甲板につなぎ止められていたワルドのグリフォン
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ