第二章 風のアルビオン
第三話 襲撃と空賊
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べて頷いた。商談が成立したので、船長は矢継ぎ早に命令を下した。
「出航だ! もやいを放て! 帆を打て!」
ぶつぶつと文句をいいながらも、よく訓練された船員たちは船長の命令に従い、船を枝に吊るしたもやい鋼を解き放ち、横静索によじ登り、帆を張った。
戒めが解かれた船は、一瞬、空中に沈んだが、発動した“風石”の力で宙に浮かぶ。
帆と船が風を受け、ぶわっと張り詰め、船が動き出す。
「アルビオンにはいつ着く?」
「明日の昼過ぎには、スカボローの港に到着しまさあ」
ワルドの質問に、船長が即座に答えた。
士郎は舷側に乗り出し、地面を見た。“桟橋”―――大樹の枝の隙間に見える、ラ・ロシェールの明かりが、ぐんぐん遠くなっていく。結構なスピードが出ているようだ。
船から見える光景を眺めている士郎に、ルイズが近寄ってきた。
「シロウ……キュルケたち大丈夫かな?」
「まあ、大丈夫だろう。ギーシュはともかくキュルケとタバサは戦い慣れしている、ロングビルに至っては……まあ心配ないだろう」
心配そうに問いかけてきたルイズに、士郎が頬を指で掻きながら答える。
すると、士郎の言葉を聞いたルイズは、頬を膨らませると、士郎から顔を背けた。
「そう言えばシロウ、前から聞きたかったんだけど……最近ミス・ロングビルと妙に仲がいいけど……何かあったの?」
「むっ……その、だな」
士郎が言いよどんでいると、そんな二人の下にワルドが寄ってきた。
「船長から話をきいてきた。ニューカッスル付近に陣を配置した王軍は功囲されて苦戦中のようだ」
ルイズははっとした顔になった。
「ウェールズ皇太子は?」
ワルドは首を振った。
「わからん。生きてはいるようだが……」
「どうせ、港町はすべて反乱軍に押さえられているんでしょう?」
「そうだね」
「どうやって、王党派と連絡を取ればいいのかしら」
「陣中突破しかあるまいな。スカボローからニューカッスルまでは馬で一日だ」
「反乱軍の間をすり抜けて?」
「そうだ。それしかないだろう。まあ、反乱軍も公然とトリステインの貴族に手出しはできんだろう。スキを見て、包囲戦を突破し、ニューカッスルの陣へと向かう。ただ、夜の闇には気をつけないといけないがな」
ルイズは緊張した顔で頷いた。それから尋ねる。
「そう言えばワルド。あなたのグリフォンはどうしたの?」
ワルドは微笑むと、舷側から身を乗り出して口笛を吹いた。すると下からグリフォンの羽音が聞こえてきた。そのまま甲板に着陸して、船員たちを驚かせた。
「グリフォンではいけないのか?」
「竜じゃないからそんなに長い距離は飛べないのよ」
士郎が疑問の声を上げる
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