第二章 風のアルビオン
第三話 襲撃と空賊
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先は、一本の枝が伸びていた。その枝に沿って、一艘の船が停泊していた。帆船のような形状であった。空中で浮かぶためだろうか、舷側に羽が突き出ている。上からロープが何本も伸び、上に伸びた枝に吊るされていた。士郎たちが乗った枝からはタラップが甲板に伸びていた。
士郎たちが船上に現れると、甲板で寝込んでいた船員が起き上がった。
「な、なんでぇ? おめぇら!」
「船長はいるか?」
「寝てるぜ。用があるなら、明日の朝、改めてくるんだな」
男はラム酒の壜をラッパ飲みにしながら、よって濁った目で答えた。
ワルドは答えずに、すらりと杖を引き抜いた。
「貴族に二度同じことを言わせる気か? 僕は船長を呼べといったんだ」
「き、貴族!」
船員は立ち上がると、船長室にすっ飛んでいく。
しばらくして、船長と思われる、寝ぼけ眼の帽子を被った初老の男を連れて戻ってきた。
「なんの御用ですかな?」
船長は胡散臭げにワルドを見つめた。
「女王陛下の魔法衛士隊隊長、ワルド子爵だ」
船長の目が丸くなる。相手が身分の高い貴族と知って、急に言葉遣いが丁寧になる。
「これはこれは。して、当船へどういったご用向きで……」
「アルビオンへ、今すぐ出航してもらいたい」
「無茶を!」
「勅命だ。王室に逆らうつもりか?」
「あなたがたが何しにアルビオンに行くのか、こっちは知ったこっちゃありませんが、朝にならないと出航できませんよ!」
「どうしてだ?」
「アルビオンが最もここ、ラ・ロシェールに近づくのは朝です! その前に出航したんでは、風石が足りませんや!」
「風石とは?」
士郎が船長に尋ねると、船長は“風石”も知らんのか? といった顔つきになって答えた。
「“風”の魔法力を蓄えた石のことさ。それで船は宙に浮かぶんだ」
魔力を込めた宝石の様なものか?
士郎がわかったようなわからないような顔をして頷くと、それを見た船長は、ワルドに向き直る。
「子爵様、当船が積んだ“風石”は、アルビオンへの最短距離分しかありません。それ以上積んだら足が出ちまいますゆえ。従って、今は出航できません。途中で地面に落っこちてしまいまさあ」
「“風石”が足りぬ分は、僕が補う。僕は“風”のスクウェアだ」
船長と船員は、顔を見合わせた。それから船長がワルドの方を向いて頷く。
「ならば結構で。料金ははずんでもらいますよ」
「積荷はなんだ?」
「硫黄で。アルビオンでは、今や黄金並みの値段がつきますんで。新しい秩序を建設なさっている貴族のかたがたは、高値をつけてくださいます。秩序の建設には火薬と火の秘薬は必需品ですのでね」
「その運賃と同額を出そう」
船長はこずるそうな笑いを浮か
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