第二章 風のアルビオン
第三話 襲撃と空賊
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。ルイズは突然の頭の豹変ぶりに戸惑い、不安そうに士郎の顔を見た。
「ふふ……失礼した。貴族に名乗らせるなら、こちらから名乗らなくてはな」
周りに控えた空賊たちが、ニヤニヤ笑いをおさめ、一斉に直立した。
頭は縮れた黒髪をはいだ。なんと、それはカツラであった。眼帯を取り外し、作り物だったらしいヒゲをびりっとはがした。現れたのは、凛々しい金髪の若者であった。
「私はアルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官……本国艦隊といっても、すでに本艦“イーグル”号しか存在しない、無力な艦隊だがね。まあ、その肩書きよりこちらのほうが通りがいいだろう」
若者は居住まいをただし、威風堂々と名乗った。
「アルビオン王国皇太子ウェールズ・テューダーだ」
ルイズは口をあんぐりと開け、士郎は苦笑いをしながら微かに肩を竦めた。ワルドは興味深そうに皇太子を見つめている。
ウェールズはにっこりと魅力的な笑みを浮かべると、ルイズたちに席を勧めた。
「アルビオン王国へようこそ。大使殿。さて、御用の向きをうかがおうか」
ルイズはあまりのことに口がきけず、ぼけっと、呆けたように立ち尽くしていた。
「その顔は、どうして空賊風情に身をやつしているのだ? といった顔だね。いや、金持ちの反乱軍には続々と補給物資が送り込まれる。敵の補給路を絶つのは戦の基本だろ。しかしながら、堂々と王軍の軍艦旗を掲げたのでは、あっという間に反乱軍の船に囲まれてしまう。まあ、空賊を装うのも、いたしかたない」
ウェールズは悪戯っぽく笑う。
「いや、大使殿には、誠に失礼いたした。しかしながら、君たちが王党派ということが、なかなか信じられなくてね。外国に我々の味方の貴族がいるなどとは、夢にも思わなかった。きみたちをためすような真似をしてすまない」
そこまで言うと、ウェールズは士郎に苦笑を浮かべた顔を向けた。
「しかし、そこの使い魔くんは、どうやら気づいていたようだったけどね。名前を聞いてもいいかな?」
「えっ!?」
「ルイズの使い魔の衛宮士郎だ」
ルイズが慌てて顔を向けると、士郎は肩をすくめ、苦笑いしながら言った。
「ふむ、エミヤシロウか……ではシロウ、教えてくれないか。どうして分かったんだい?」
ウェールズが悪戯っぽく、しかし力を込めた目で士郎を見つめて問う。
「まあ、確信があったわけではないがな。ただ空賊という割には、動きが統制されすぎていた……まるで軍隊のようにな。それに、あなたの立ち居振る舞いも気品が隠しきれてなかった。それでただの空賊ではないと思ったというわけだ」
「それで、私たちが王党派の軍と考えたわけかい?」
ウェールズが肘掛に肘をかけながら聞くと、士郎は軽く頷いた。
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