第二章 風のアルビオン
第三話 襲撃と空賊
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を指差す。
「賊の中には、どうやらメイジもいるようだしな」
士郎の指差した先では、乗り移ろうとする空賊たちに驚き、ギャンギャンと喚き立てていたグリフォンの頭に、青白い雲が覆ったと見えると、グリフォンは甲板に倒れ、寝息を立て始める。
「眠りの雲……どうやらそのようだな」
どすんと、音を立て、甲板に空賊たちが降り立った。派手な格好の一人の空賊がいた。
元は白かったらしいが、汗とグリース油で汚れて真っ黒になったシャツの胸をはだけ、そこから赤銅色に日焼けした逞しい胸が覗いていた。
ぼさぼさの長い黒髪は、赤い布で乱暴にまとめられ、左目には丁寧に眼帯がまかれ、無精ひげが顔中に生えていた。その男が空賊の頭のようだ。
「船長はどこでえ」
荒っぽい仕草と言葉遣いで、辺りを見回す。
「わたしだが」
震えながら、それでも精一杯の威厳を保とうと努力しながら、船長が手を上げる。頭は大股で船長に近づき、顔をぴたぴたと抜いた曲刀で叩いた。
「船の名前と積荷は?」
「と、トリステインのマリー・ガラント号。積荷は硫黄だ」
空賊たちの間から、ため息が漏れた。頭の男はにやっと笑うと、船長の帽子を取り上げ、自分がかぶった。
「船ごと全部買った! 料金はてめえらの命だ!」
船長が屈辱で震える。それから頭は、甲板に佇むルイズとワルドに気付いた。
「おや、貴族の客まで乗せてるのか」
ルイズに近づき、顎を手で持ち上げようとしたが、隣に立っていた士郎がその手を掴んだ。
「あんっ! なんだてめぇは……殺されてぇのか……」
「ふむ……殺される気は無いんだがな?」
周りを囲んでいた空賊が緊張し、武器を構えたが、士郎は飄々とした態度で肩をすくめた。
「俺はこう見えても、この子の使い魔なんでね……あまり不用意に近づいてきてもらっては困るな」
「シロウ……」
「テメェ……」
ルイズが頬を染め潤んだ瞳で、頭が怒気を含んだ目で士郎を見上げると、士郎はまったく焦る様子を見せずに頭に話しかけた。
「まあ、怒ることはないだろう……空賊たちの王さま(・・・・・・・・)とあろうものが、このぐらいで腹をたてるのか?」
士郎が意味ありげな視線で頭を見つめると、頭は一瞬だけ士郎の視線と言葉の意味に気づき、驚愕の表情を露わにしたが、すぐにニヤリと笑った。
「グアッハッハッハッハ! 確かにそうだなっ! このぐれぇのことで腹を立てるのはクソ貴族ぐれえのもんだろうさ!」
いきなり大声で笑い始めた頭に周囲が呆然としていると、頭は自分の船に向き直った。
「てめえら! こいつらも連れて行きな! 身代金がたんまり貰えるだろうぜ!」
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