暁 〜小説投稿サイト〜
私立アインクラッド学園
第二部 文化祭
第43話 きっと変わらない日々
[3/3]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
イに目を留める。

「……小さい頃からここにいたから、本質的には怖いと感じないのかもな」
「だとしたら、少しずつ記憶が戻ってくるかもね」
「だったらいいな……」

 和人の言葉に深く同意する。しかし、明日奈はその思いとは裏腹に、ずっと今のままがいいという思いもあった。
 その理由は──

「ね、キリト君。ユイちゃんの記憶が戻ったら、もちろん嬉しいけど……同時に、なにかが終わってしまいそうで……ちょっと、寂しい」

 明日奈は少し俯き、言う。

「だって……出会って間もないけど、ユイちゃんはなんていうか、本当にわたしとキリト君の子供のような気がしてきて……。もしユイちゃんの記憶が戻ったら、もう『パパ、ママ』なんて呼んでくれないだろうなって」
「ま、そうだろうな」
「……」
「でも、俺達がユイと過ごした日々は変わらないし、消せないよ。家族みたいにとはいかずともさ、また一緒に遊んでやったりすることはできるだろ?」
「キリト君……」

 明日奈は目を見開いた。そして思わず吹き出す。
 和人が傷ついたような表情をした。それもまた可笑しくて、更なる笑いを呼ぶ。

「……我ながらハズカシーこと言ったなぁとは思ってるけどさ、そこまで笑わなくたって……ていうかここ、笑う場面じゃないだろ。むしろもっと、こう……」
「ふふ。だって、君がそういうこと言うのって珍しいから」
「それを笑われると傷つくな」

 じとっと明日奈を一瞥し、ユイの方を向く。

「俺にはお前だけだよ、ユイ……ママはひどいからさぁ」
「ご、ごめんってば! キリト君を傷つけるつもりは……あははっ」
「言いながら笑う!?」
「まあまあ、気にしない気にしなーい。早く奥へ進みましょ」
「勝手ですこと……」
「別に、勝手じゃないもーん」

 ぶつぶつ文句を言う和人と、なんだか楽しそうなユイの腕を掴み、長い廊下を歩き出した。
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ