暁 〜小説投稿サイト〜
私立アインクラッド学園
第二部 文化祭
第43話 きっと変わらない日々
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ないし」
「嘘吐いたら梅干しも抜きだからねー」
「なんか理不尽じゃないか……? ……ていうかな、ユイの手前、こんな話は止そうぜ」

 ちなみにユイは団栗収集に夢中で、何1つ聞いていなかったようだった。

「じゃ、行くか」

 和人が屋敷に足を踏み入れる。中は真っ暗だ。
 髪も服も真っ黒な和人が、簡単に闇にとけてしまいそうに見えた。
 明日奈はそれが怖くて、和人の手を掴んで、外へ引っ張り戻した。

「な、なにするんだよアスナ」
「……あんまり、1人でどこかへ行こうとなんてしないで」

 明日奈は遠慮半分、恥ずかしさ半分で顔を伏せ、目線だけを和人に向けて言う。
 ぱちくりと瞬きをした和人の瞳には動揺の色が浮かんでいて、その頬は少し赤い。慌てたようにふいっと顔を背ける、いつもは大人びた彼だけれど、今はなんだか少し子供っぽく見えた。
 明日奈は微笑ましさに唇を綻ばせ、ふふ、と笑った。

「な……なんで笑う?」
「ふふ、さあね」
「なんか嬉しそうだな……」

 じとっとこちらを見つめる和人をスルーし、その場でくるりと一回転する。

「そんなことよりキリト君。ここへ来てみたのはいいけど……」
「一体なにすればいいんだろうな」
「ここに来てみれば、なにか判ると思ったんだけどなあ……ユイちゃん、なんでもいいの。なにか思い出さない?」

 訊くも、案の定ユイは首を傾げるばかりだ。

「うーん……とりあえず、中に入ってみないか?」

 和人が困ったように──いや、実際困っているのだろう──言う。

「うう、でも怖いよー。だってキリト君、前に言ってたじゃない。タンスがひとりでにどうとか…」
「はは、あれは単なる冗談だって。……それに、いざという時はその、アスナとユイは俺が……ま、守るからさ」

 不器用な和人の、精一杯の言葉。
 ──単なる冗談だって
 それはきっと、明日奈を安心させる為の嘘。正直ありえない話でも、明日奈には分かる。
 けど、もう怖くない。和人が隣にいてくれるから。それに明日奈だって、和人とユイを守らなければならないから。

「じゃあわたしも、君やユイちゃんが怖い目に遭ったら守ってあげるね」
「……俺は別に、お化けとか幽霊は苦手じゃないぞ」
「細かいことは気にしなくてよし!」

 明日奈は微笑しながら言い、屋敷の扉を勢いよく開けた。

 **

「入ったはいいものの……」
「なにもないね……」

 和人と明日奈が溜め息混じりに呟く。対してユイは、なんだか余裕の表情だ。

「……ユイちゃん、怖くないの?」
「怖くないよ、ママ」
「怖いのか、アスナ?」
「そっ、そんなわけないじゃない!」
「そんなに怒鳴るこたないだろ……」

 そう言って、ふとユ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ