第二部 文化祭
第43話 きっと変わらない日々
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ないし」
「嘘吐いたら梅干しも抜きだからねー」
「なんか理不尽じゃないか……? ……ていうかな、ユイの手前、こんな話は止そうぜ」
ちなみにユイは団栗収集に夢中で、何1つ聞いていなかったようだった。
「じゃ、行くか」
和人が屋敷に足を踏み入れる。中は真っ暗だ。
髪も服も真っ黒な和人が、簡単に闇にとけてしまいそうに見えた。
明日奈はそれが怖くて、和人の手を掴んで、外へ引っ張り戻した。
「な、なにするんだよアスナ」
「……あんまり、1人でどこかへ行こうとなんてしないで」
明日奈は遠慮半分、恥ずかしさ半分で顔を伏せ、目線だけを和人に向けて言う。
ぱちくりと瞬きをした和人の瞳には動揺の色が浮かんでいて、その頬は少し赤い。慌てたようにふいっと顔を背ける、いつもは大人びた彼だけれど、今はなんだか少し子供っぽく見えた。
明日奈は微笑ましさに唇を綻ばせ、ふふ、と笑った。
「な……なんで笑う?」
「ふふ、さあね」
「なんか嬉しそうだな……」
じとっとこちらを見つめる和人をスルーし、その場でくるりと一回転する。
「そんなことよりキリト君。ここへ来てみたのはいいけど……」
「一体なにすればいいんだろうな」
「ここに来てみれば、なにか判ると思ったんだけどなあ……ユイちゃん、なんでもいいの。なにか思い出さない?」
訊くも、案の定ユイは首を傾げるばかりだ。
「うーん……とりあえず、中に入ってみないか?」
和人が困ったように──いや、実際困っているのだろう──言う。
「うう、でも怖いよー。だってキリト君、前に言ってたじゃない。タンスがひとりでにどうとか…」
「はは、あれは単なる冗談だって。……それに、いざという時はその、アスナとユイは俺が……ま、守るからさ」
不器用な和人の、精一杯の言葉。
──単なる冗談だって
それはきっと、明日奈を安心させる為の嘘。正直ありえない話でも、明日奈には分かる。
けど、もう怖くない。和人が隣にいてくれるから。それに明日奈だって、和人とユイを守らなければならないから。
「じゃあわたしも、君やユイちゃんが怖い目に遭ったら守ってあげるね」
「……俺は別に、お化けとか幽霊は苦手じゃないぞ」
「細かいことは気にしなくてよし!」
明日奈は微笑しながら言い、屋敷の扉を勢いよく開けた。
**
「入ったはいいものの……」
「なにもないね……」
和人と明日奈が溜め息混じりに呟く。対してユイは、なんだか余裕の表情だ。
「……ユイちゃん、怖くないの?」
「怖くないよ、ママ」
「怖いのか、アスナ?」
「そっ、そんなわけないじゃない!」
「そんなに怒鳴るこたないだろ……」
そう言って、ふとユ
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