初めての挑戦
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者というのは、困るものだ」
「そうでしょうか」
「ああ、慎重と臆病は似て非なるものだよ。どうだい、この後食事でも?」
「御遠慮します」
「は、え。いや、ちょっと!」
慌てたように声をかけるウィリアムに踵を返し、ライナは長い髪を揺らして歩きだした。
遠ざかる背に、ウィリアムがかける言葉は届かない。
廊下を曲がれば、あっという間に姿は消えた。
ウィリアムは呆然と背中を追い、眉間にしわを寄せる。
そして、壁に拳を叩きつける。
「んだよ。くそ――ちょっと顔が良いからって、ふざけてんのか」
ウィリアムの表情からは笑顔が消えて、見えなくなった廊下を睨み続けていた。
+ + +
アレス・マクワイルドのチームは三号館の戦術シミュレータ装置で訓練していた。
さすがに有名な人物だけあって、訓練を終えた人がまばらに共有スペースのモニターを見ている。
聞こえる烈火との言葉に、歩いていたライナも足を止めた。
共有スペースに映るのは、マクワイルドチームの訓練内容だ。
どうやらこちらは対人戦を行っているようだ。
見れば、アレスを相手に他の四人が共同で勝負を挑む形であった。
一対四という状況にも関わらず、むしろアレスの方が有利に進めている。
相手の行動に対して的確に阻害し、数分前の行動が布石となる。
機械の様な正確な行動に、まるで決まり事のように四人は遊ばれているようだった。
実力差があるのだろう。
アレス・マクワイルドはチームに恵まれなかったらしい。
そう思ったライナの考えは、見学して数分後には訂正する事になった。
相手は決して弱くない。
艦隊運動や状況判断を見れば、むしろ、そのうちの一人はテイスティアと同等か、それ以上の実力がある。
特にその思い切りの良さは、周囲の動きをスムーズに変えている。
自らだけではなく、他の艦隊を引っ張ることができる人間は珍しい。
それにつられるように動く周囲も、決して下手ではない。
まだぎこちなさは残るものの、出来ることを確実にこなしている。
強い――だが、アレスが的確に相手を崩しているだけ、弱く見えるだけだ。
「あーあ。良いようにやられて、こりゃ、今年はマクワイルド先輩は駄目かな」
「フォーク先輩のチームは全員が主席らしいからな」
「烈火のアレスもさすがに四連覇は難しいか」
何もわかっていない観客が口にする言葉に、ライナは小さく苛立った。
そう思うなら、四人を相手に戦ってみればいい。
おそらくは――ライナでも難しいかもしれない。
そんな考えに、ライナの顔に自然と笑みが浮かんだ。
自分ですら無理だと思う戦いが、いま目の前にある。
そう思えば、ライナは楽しいと感じる。
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