初めての挑戦
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いるのだから。
会話というよりもほぼ一方的にウィリアムが話しかける。
それは過去の戦術シミュレータ大会で本大会に出場した時のことであったり、陸戦技能の大会で学年優勝を果たした時のこと。
それらの言葉に、しかし、ライナの表情は動かない。
ウィリアムが小さく眉をしかめる。
打っても全く響かず、やがて話題も尽きて来たようだった。
一瞬の間が空けば、ライナの顔がウィリアムへと向いた。
身長差からライナが見上げる形となった。
「一つお聞きしてよろしいですか?」
「もちろん。何でも聞いてよ」
「先輩は戦いで恐いと思ったことがありますか」
「恐い?」
「ええ」
頷いたライナに対して、ウィリアムは少し考えた。
そして、柔らかく笑う。
「ないね。怯えていては、将来的に将官なんて務まらないさ」
「そうですか、私と同じですね」
そんな言葉に対しても、ライナの感情は動かない様だった。
笑いかけたままで、ウィリアムの笑顔が固まる。
ウィリアムの方からすぐに顔を戻せば、指を唇にあてた。
「恐れというのは必要なことなのでしょうか」
「何を考えているかわからないけど、恐いなんていうのは臆病者のいう台詞だよ。あのブルース・アッシュビーが敵前逃亡をしたことがあるかい?」
ライナは考える。
果たして、リシャール・テイスティアは臆病者であるのだろうかと。
少なくとも現状までの訓練を考える限り、あり得ないように見えた。
むしろ、訓練中は誰よりも激戦の中にいて、戦っているように見える。
彼が臆病者であるのならば、士官学校の人間はほとんどが臆病者になってしまう。
心情的にはウィリアムが正しいのだと思う。
個人の気迫が左右した古い戦いならばいざ知らず、今はむしろ感情の方が余計だ。
恐いと思う暇があれば、一瞬でも早く指揮をした方がいい。
そう理解しながらも、テイスティアの言葉は、ライナの頭の中に残り続けていた。
+ + +
圧搾音が鳴り響き、筺体の扉がゆるりと開いた。
共有スペースのモニターでは、チームの勝利を告げる映像が流れていた。
対戦相手はコンピュータ――しかし、同時に訓練を行っていた別のチームからは感嘆の声が漏れていた。
コンピュータとはいえ、設定された高難度の対戦は、時には教官ですら時には負ける場合があるほどの強さだ。
そんな相手に対して、ほぼ圧勝の結果にフォークは満足そうに頷いた。
訓練で、チームのメンバーが互いに戦うことはなかった。
フォークの立てた作戦を、それぞれが完璧にこなせば、誰にも負ける事はないというのが、総司令官であるフォークの方針だ。
実際にそれぞれが仕事を完璧にこなし、高難度のコンピュータを相手に
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