初めての挑戦
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の話は、わずか半年余りで非常によく聞いた。
戦術シミュレート大会が開催以来三連覇を達成した天才。
彼が見回り当番のなれば、その日の街への脱走は中止になり、時には忙しい時期になど教官から学生とは別に学校の事務の仕事を与えられ、こなしている。
おそらくは学校で誰よりも有名な人物。
その事に同学年であるアンドリュー・フォークは良い顔をしないが、ライナ・フェアラートにとってはどうでも良い事であった。
ライナにとっては、フォークも一学年の落第生も同レベルでしか数えられないのだから。
小さく息を吐けば、授業の終わりを告げる鐘が鳴り、ライナは静かにノートを閉じた。
+ + +
戦術シミュレータ大会の一カ月は、放課後に特別な任務もなく、訓練に専念が出来る。
本日の掃除担当でないものは、急いでそれぞれの訓練場所に向かっている。
最年少の一学年では、単純な訓練の他に茶の準備など、いろいろ用事があるからだ。
くだらないことね。
心の中でそう呟きながら、ライナもノートを鞄に閉まった。
「ライナちゃんはいる?」
室内の入口に顔を覗かせたのは、上級学年の先輩だ。
ケビン・ウィリアム候補生。三学年の先輩が一学年の部屋に姿を見せれば、慌てたように学生達が敬礼を行った。
三学年の主席――それも、士官学校の隠れ人気ランキングで上位の人物だ。
数少ない女性が目を輝かせていた。
そんな状況を自らも理解しているのか、ウィリアム候補生は答えるように小さく手を挙げる。
ざわめきが大きくなった。
と、視線の先にライナ・フェアラートの姿を発見すればゆっくりと笑みを広げた。
「ああ、いたね。迎えに来たよ」
「そう、ですか」
静かに答え、ライナは出入り口を目指す。
羨望が入り混じる視線がライナに突き刺さるが、当の彼女はどこ吹く風の様子だ。
眉ひとつ動かすことなく、鞄を手にして、出入口へと歩く。
ウィリアムが大げさな動作で出迎えた。
「さ、行こうか。荷物を持つよ」
「結構です」
「そう言わずに……」
「荷物をもてないほど、か弱いわけではありません。はっきり申し上げて、迷惑です」
はっきりと否定の言葉に、ウィリアムは語尾を濁した。
それでもあいた手がライナの鞄の辺りを彷徨うが、有無も言わさずに歩きだしたライナを止める事はできない。
「授業で何かわからない事はない?」
「いいえ、まったく」
「あ、そう。じゃ、生活で困った事とか。抜けだすいい場所とか知ってる?」
「興味がありません」
取り付く島がないという言葉は、この事なのだろう。
それでもウィリアムは他の人間に比べれば、頑張っているほうだ。
彼女の容貌を見て声をかけた多くの人間は、初日で撃沈して
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