第百四十一話 姉川の合戦その十三
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「ですから」
「ここで何としてもな」
「はい、倒しましょう」
この機会にというのだ、だがだった。
宗滴が来る、このことには明智が言った。
「それがし、宗滴殿とお会いしたことがありますが」
「かなりの方じゃな」
「まさに文武に秀でその戦ぶりたるや」
それはどういったものかというと。
「まさに鬼です」
「何十倍の一向宗を破ったこともあるな」
「若し戦の場に出て来られるなら」
その場合は、という仮定だ。だがその場合はというのだ。
「かなり厳しい戦になるかと」
「そうであろうな。今朝倉家は越前に向けて退いておるが」
その彼等にだというのだ。
「宗滴殿が合流されればな」
「朝倉家の強さは宗滴殿があってのことです」
それでこれまで家も保たれてきたのだ、宗滴はまさに朝倉家の大黒柱であるのだ。
「それ故に」
「ではまずは小谷城を囲み勘十郎達が来てからじゃ」
それでだというのだ。
「仕掛けるとしようぞ」
「では」
明智は信長の言葉に応えた、織田家の軍勢は姉川から小谷城に向かう、徳川の軍勢も同行する。戦は新たな動きに入ろうとしていた。
浅井の軍勢は小谷城に退き朝倉の軍勢は越前に向けて逃げていた。その報を聞いてだった。
宗滴は一乗谷の己の部屋でこの時も高麗人参をかじっていた、そしてだった。
その人参を全て口に入れてからだ、己の家臣達に強い声で告げた。
「刻が来た、ではじゃ」
「ご出陣ですか」
「そうされますか」
「うむ、出る」
まさにだ、そうするというのだ。
「最早それしかない」
「朝倉家を守る為には」
「殿御自らがですか」
「若しかするとこの度が最後の戦になるやも知れぬ」
この覚悟も口にする。
「妙薬を手当たり次第に口に入れ無理に力を戻しておるがな」
「それでもですか」
「殿は」
家臣達の言葉が苦い、その顔も。
「最早そのお身体は」
「限界ですか」
「かろうじてもっておるだけじゃ」
そうした状況だというのだ、実は。
「わしも八十を超えておる、それではな」
「この度が、ですか」
「最後やも知れませぬか」
「何時死んでもおかしくはない」
八十を超えておりしかも病みあがりだ、これでは本当に何時この世を去ってもおかしくないというのは嘘ではなかった。
「それでもな」
「攻めますか」
「そうされますか」
「一度あの御仁とあいまみえたいと思っておった」
宗滴はこうも言った。
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