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八条学園怪異譚
第四十三話 白蛇その十六

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「本当に嫌いなのね」
「ザ=害虫ですよね」
「この世にいたらいけないものですから」
「蠅や蚊よりも嫌いなのね」
「蠅とかもお店に出たらアウトですけれどね」
「ゴキブリはすぐに湧くし増えてしぶといですから」
 まさに三拍子だ、悪い意味で。
「ですから本当に気をつけてるんですね」
「見るのも嫌です」
「それで二人共いつも綺麗にしてるのね」 
 見れば二人共今着ている制服も綺麗だ、少なくとも何ヶ月も着っぱなしのものではなかった。
「アイロンまでかけて」
「アイロンしたら消毒にもなるんですよ」
 愛実は右手の人差し指を立ててこう言った。
「熱消毒です、あとちゃんと一月に一回はクリーニング出して」
「夏はブラウスはすぐに洗って」
 聖花も言う、とにかく綺麗好きな二人だった。
「ちゃんとしないと」
「ゴキブリは不潔な場所に湧きますから」
「あんた達にとってはゴキブリが一番怖いのね」
 妖怪や幽霊は全く怖がらない二人だがそちらは、というのだ。
「そうなのね」
「はい、怖いというか見たくもないです」
「この世にいて欲しくないです」
「成程ね、まあうちの学園にはゴキブリの妖怪はいないからね」
 二人にとって幸いにだとだ、茉莉也は言った。
「そこは安心してね」
「はい、そのことは本当に嬉しいです」
「ゴキブリがいないことは」
「ゴキブリ自体は何処にもいるけれどね」
 当然学校にもだ、この虫は本当に何処にでも湧く。
「人間のいるところゴキブリありだから」
「ですよね、特に食べ物のあるところには」
「絶対にいますから」
「私もやっぱりお掃除しないと駄目かしら」
 茉莉也は首を左に捻って右手を頭の後ろにやって言った。
「たまには」
「たまにはっていうかいつもですよ」
「お掃除は」
「厳しいわね」
「厳しいっていうか当たり前ですよ」
「そんなの常識じゃないですか」
 何時になく厳しい口調で言う二人だった、その口調はまさに母親や姉のものだった。二人の属性も出ていた。
「ゴキブリ出たらそれでアウトですよ」
「もうそれで」
「本当にゴキブリ嫌いなのね」
 茉莉也は二人のゴキブリ嫌いにある意味感心して言った。
「もう怨念めいてるわね」
「ですから、お店の天敵ですよ」
「一匹もいたら駄目なんですから」
 尚よく言われることだがゴキブリは一匹見たら十匹いると思うべきである。とにかく物凄い勢いで増えていくのだ。
「だからです」
「私達にしても注意してるんですよ」
「じゃあ私のお部屋とかは?」
「今すぐ大掃除ですね」
「ちょっとはした方がいいですよ」
 愛実の方が厳しかった、やはりこうしたところは母親気質故であろうか。
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