第14話「京都―休憩」
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最も目立つ表面的な部分。傷痕だ。
腕、左肘に残された傷痕が痛々しい。腹部、抉られたような傷が生々しく残っている。その他にもうっすらと、だが確実にはっきりと見えるほどに体の至るところにたくさんの傷を残していた。
「……どれほどの修羅場を?」
そんな小さな言葉と共に、刹那はフと思い出した。
彼が副担任として赴任してきて間もない頃、一人で夜道を歩いていた時に現れたバケモノのこと。そしてそのバケモノを一刀のもとに切り捨てたタケルがいたことを。
そして、思い浮かぶ仮説。
あんなバケモノたちと日々戦っているとしたら? それこそアレほどの傷が出来てしまうのではないだろうか。
――いや、だが一体何のため?
彼の仕事があのバケモノ退治なのだとしたら。
先日に見せた彼の恐るべき殺気、技量。その全てに納得がいく気がした。
一人頷く刹那に、首をかしげていたアスナだったが、彼女もタケルの傷痕に気付いたらしい。彼女もまた「何、あの傷」と顔を青くさせている。
そんな女性達に裸を見られているとは夢にも思っていないタケルは、やはり普段の姿からは一切想像できないほどに嬉しそうに湯浴みを済ませ、風呂に体を浸からせた。
「っくぁ〜〜〜〜、いい湯だ」
これこそ本当のおっさんだとまるで女性陣に見せ付けるかのように、息をついたタケルはジュースを一口飲み、空を見上げた。
昼や夕方とは違い、空に太陽はいない。代わりに、月がその姿を雲の隙間から覗かせていた。太陽の光を反射し、地球に映し出しているその姿は、生命力に溢れた太陽とはまた違い、幻想的で、どこか儚い光を導いている。星々がきらびやかに輝き、月こそが空の王だと主張しているかのようだ。
「……」
「「?」」
急に静かになったタケルに、二人して首を傾げる。
「……」
ただ、無言で空を見つめていた。先程まで幸せそうだった顔もいつの間にか、無表情にもどっている。
どうしたのだろうか、と二人して身を乗り出したのが失敗だった。
「ちょ、神楽坂さん? そんなところに手を……!」
「え、あ。アハハごめんごめん、っていうかそういう桜咲さんこそ!」
「え、あわわわ。スイマセン!! け決してそんなつもりは……!」
慌てて体を離し、そして
「「「あ」」」
タケルと視線がかみ合った。
「「「……」」」
奇妙な緊張感が場を支配していた。浴場の端にタケル、丁度反対側にアスナと刹那。これがもし裸を見た側が男だったなら、もっと話は簡単に済んでいただろう。だが、厄介なことに裸を見たのは女性側で、見られたのは男。しかも全身くまなく。
「……と、とりあえず、今日見たことは忘れてく
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