第四十六話 俺ってそんなに嫌な奴か?
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ているが……」
俺の言葉にヤンが首を横に振った。
「権力を握ってしまえば口実など何とでもなりますよ。機を見るに敏と言うか、戦機を捉えるのが上手いと言うか、手強いですね。戦略だけじゃない、政略面でも手強いです」
「そうだな……」
「……」
水割りを一口飲んだ、どうも苦い、気持ち良くは酔えないかもしれない。
「殆どの貴族が殺されるか帝国から追放されたらしい。今、商船でフェザーンに向かっているようだが中には同盟への亡命を希望している貴族も居るらしいな」
「そうですか……」
いかん、どうも会話が途絶えがちだ。
「受け入れるのでしょうね」
「それはそうだろう、向こうの生の情報が入るんだ」
ヤンが微かに頷いた。
「聞きたいですね、エーリッヒ・ヴァレンシュタイン、どんな人物なのか」
「逃げ出したくならなきゃ良いけどな」
ヤンが苦笑を浮かべた。“そうですね”と言って一口水割りを飲む。実際彼の人物像など碌な物ではないだろう。貴族達の殆どが殺されるか財産を没収された上で帝国から追放されているのだ。冷酷、非情、狡猾、残忍、俺にはそんなイメージしか湧かない。権力欲の強い嫌な男にしか思えない。
「帝国軍最高司令官兼帝国宰相か、皇帝が幼い以上彼が皇帝の様なものだろうな」
「彼より力の無かった皇帝は沢山いますよ、むしろ彼以上に力の有った皇帝なんてほんの僅かでしょう。劣悪遺伝子排除法を廃法にしたんです。実力はルドルフ並みかな」
「確かにな」
劣悪遺伝子排除法、ルドルフ大帝が制定した悪法だ。この悪法の所為で自由惑星同盟が生まれたと言っても良い。銀河帝国の代々の皇帝達もこの法が悪法であるという事は理解していただろう。だが初代皇帝であるルドルフが作った法であるだけに廃法には出来なかった。晴眼帝マクシミリアン・ヨーゼフ二世でさえ有名無実には出来ても廃法には出来なかった。
「簒奪とか考えているのかな? 如何思う?」
俺が問い掛けるとヤンは髪の毛を掻き回した。
「可能性は有りますね。軍は押さえている、簒奪を阻むとすれば貴族ですが既に内乱で力を失っています。改革が上手く行けば平民達の支持は絶大な物になるでしょう。不可能とは思えません」
それに比べて同盟は……。前回の出兵が失敗した事で政府は躍起になって責任回避を図ろうとしている。政府だけを責めるのはおかしい、出兵は市民が望んだ事だと責任を同盟市民にも押し付けようとしているのだ。ネグロポンティ国防委員長の辞任で幕引きを図っているが政府の支持率は低下しガバナビリティの低下は否めない……。余りにも対照的な両者だ。
「しかし彼は平民だろう、実力者として受け入れるのと皇帝として受け入れるのは違うんじゃないのか? つまり皇帝になるには権威が要るんじゃないかと思うんだが……。その辺りは如
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