第一物語・後半-日来独立編-
第五十三章 その場所へ想い走らせたならば《4》
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に繋がった。
落ちるなかで実之芽はセーランの腹部を見た。
傷一つ無かった。
完全に、防がれたのだ。
「ああ」
落胆の声が漏れた。
何時から自分は、こんなにも弱くなったのだろうかと。
前は確かに強かった。
誰もが認める強者であり、結果として覇王会隊長も務めることとなった。
しかし今の自分は、自分でも解る程弱い。
「あああああああああ!!」
悔しいから、抗った。
身体に繋がれた流魔線を消滅させる勢いで、日来の長を負かすための力で。
臨界点を越す勢いのまま、実之芽を中心とした半径二十メートルは雷が乱れ狂う領域となった。
青い雷が地面を叩き付け、近くにある戦闘艦や航空船を壊していく。
閃光のように眩しく、絶叫のような冷たい音が鳴り響く。
最も近くにいたセーランさえもこれを止めることは出来ず、ただ光のなかへと飲み込まれていった。
●
西貿易区域のほぼ中央にある解放場から、一人の少女が南側で起こった激しい雷光を見ていた。
雷鳴も続けて聴こえ、まるで叫びのような気がした。
解っている、あそこにいるのは、
「実之芽――――!」
解放場に立っていた宇天学勢院覇王会会長、委伊達・奏鳴は名を呼び解放場から離れようとした。
が、それを許さんとする束縛系術によって、身体中に神経を痛め付けるような痛みが走った。
「うあああああ!」
痛みは身体中に行き渡り、最終的に脳へと伝わり、脳を痛め付ける。
まるで脳を掴まれ、潰されるかのような痛みだ。
痛みから解放場へと崩れ落ち、痛みの残る頭に手錠を掛けられた手を被せた。
この束縛系術によって、解放場から離れることは出来無い。
しようものならば先程のように、全身を痛みが支配する。
「く、私は何をやっている……。もう決めたんだ。もう誰にも迷惑を掛けないと、だから……」
自分はただ解放の時間を待っていればいい。皆に迷惑を掛けるのもそこで最後。
もう決めたことなのだ。今更変えることなど出来無い。
解放場を背負う黄森のドレイク級戦闘艦・駆翔天の甲板にいる、黄森の天桜学勢院覇王会指揮官とその補佐が、船尾に近い方からた折れ込む宇天の長を見た。
動く気はなく、ただそれを見ていたという感じだった。
束縛系術の罰による痛みから宇天の長は震えながらも立ち上がり、指揮官補佐こと加藤・清継は口を開いた。
「辰ノ大花の長はなんであんなに弱いのでしょうね。それに付く他の覇王会のメンバーも気が知りませんが、まあ、この解放が済めば辰ノ大花には覇王会は必要無くなります。全ては私達の長の筋書き通り。さすがです」
「そう言うな。宇天長も人間だ。拙者達となんら変わらない」
「なんでシゲさんはそう相手を庇うのですか。理解に苦しみます」
「人の命を殺
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